平成29年度(2017年度) 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告  平成29年2月、日本身体障害者団体連合会(以下、日身連という)をはじめ、障害者団体が参加し決定された「ユニバーサルデザイン2020行動計画」は、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会までをゴールとせず、その後に続くこととして、心のバリアフリーとユニバーサルデザインの街づくりの推進を図るために具体的な内容が示されている。  日身連は、この行動計画の協議に参加した団体として、また、全国に組織されている障害当事者団体の連合会として、国や政党、民間事業者等に対し行動計画の実現と地域への波及を求め、発言の機会において意見要望を行うとともに、フォーラムや研修会を開催する等、日身連の事業活動に積極的に取組んだ。  しかしながら、障害者差別解消法及び改正障害者雇用促進法施行から2年経った今も、「合理的配慮の提供」に対する認識と理解不足による問題が指摘されている実態をしっかりと捉え、引き続き、加盟団体と連携協力して取り組んでいく。  災害時の対応等に関しては、東日本大震災や熊本地震から得た教訓が忘れ去られないよう、また、現在、避難生活をおくっている方々への支援対策や、防災・減災に向けたバリアフリー対策等の促進が図られるよう、国及び政党に対し意見要望を行った。  また、障害関係団体や企業、大学関係者等からのアンケート調査や意見交換、インタビュー等の協力依頼についても、障害福祉の向上につながるよう対応に努めた。  日身連の最重要課題である財政の安定化の問題については、日身連財政の安定化に対する検討委員会(以下、「財政検討委員会」という。)で検討を行うとともに、加盟団体年会費(分担金)算定式の見直しを行った。(第3回定例理事会並びに第2回定時評議員会で可決。)また、第1回定時評議員会における評議員議題提案(役員報酬・理事及び評議員定数の見直し)については、日身連組織体制強化及び障害者施策等に関する検討委員会(以下、「施策検討委員会」という。)において、来年度内の検討報告をめざし、引き続き、協議検討を行う。 主な事業: 1. 『第62回日本身体障害者福祉大会ぎふ清流大会』の開催  平成29年5月30日、31日の二日間にわたり、日身連並びに岐阜県身体障害者福祉協会主催により全国から約2,500人の会員参加者を迎え、岐阜メモリアルセンター・で愛ドーム(岐阜県岐阜市)において盛大に開催した。  大会初日(30日)は、岐阜都ホテルにおいて第1回定時評議員会並びに政策協議(テーマ:ユニバーサルデザイン2020行動計画がめざす共生社会の実現と障害者団体の役割について)を開催した。政策協議では「ユニバーサルデザイン2020行動計画について」と題し、まず、基調講演を岡西康博(おかにしやすひろ)氏(内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官、内閣審議官)に、シンポジウムは、シンポジストに長井総和(ながいのぶかず)氏(国土交通省総合政策局安心生活政策課課長)、久保厚子(くぼあつこ)氏(全国手をつなぐ育成会連合会会長)、尾上浩二(おのうえこうじ)氏(内閣府アドバイザー)、コメンテーターに岡西康博(おかにしやすひろ)氏、進行を阿部一彦(あべかずひこ)日身連会長で行った。また、福祉・芸術文化・スポーツ等の拠点づくりとして岐阜県が進めている清流福祉エリアの施設見学(福祉友愛プール他)を行った。  二日目(31日)は、大会式典及び議事を行った。式典では加盟団体から推薦を受けた55人の方に会長表彰が授与された。議事では、平成28年度事業報告及び平成29年度事業計画が報告され、大会宣言並びに大会決議が満場一致で採択された。   2. 国及び政党等に対する要請行動及び審議会等への積極的参画 (1) 内閣府障害者政策委員会や審議会(厚生労働省社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会)の委員はじめ、共生社会に向けて関係府省庁内で開催された委員会等での検討協議に参加するとともに、加盟団体への情報提供に努めた。 (2) 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会にむけ国や大会組織委員会、競技会場関係者が開催した委員会等にも参加し、意見や提案に努めた。 (3) 国に対する『日身連要望事項』については、理事会の審議を経て、正副会長会を中心に各ブロック等から提出された要望事項を取りまとめ、関係府省庁からの文書回答を求め要望書を提出した。(関係府省庁からの回答をまとめた冊子については加盟団体への情報提供として配布予定。) (4) 以前より注視していたバリアフリー法の一部改正については、他の障害者団体と連携し、意見要望を行った。また、障害者の芸術文化等の促進については、超党派で創設された共生社会の実現を目指す障害者の芸術文化振興議員連盟と連携し、ネットワークを組む障害者団体等との協力のもと、活動の啓発促進に努めた。 (5) 国や関係機関からのアンケートやヒアリング等への協力のほか、一般企業や大学関係者等からの意見交換等に積極的に努めた。なお、低料第三種郵便物制度の問題については、日本障害フォーラム(JDF)及び全国障害者団体定期刊行物協会連合会と連携して取り組んでいるところだが、一日も早い解決にむけ取り組んでいく。 3. 災害時に関する対応 (1) 平成29年7月に発生した九州北部豪雨の被害が極めて大きかったことから、熊本地震の被災地加盟団体のご厚意により被災者支援として熊本地震の支援金の一部(2,658,694円)を送金し、被災地で活用していただくことができた。 (2) また、障害関連施策等に関し政党が開催したヒアリング等において、避難所や応急仮設住宅のバリアフリー化や相談支援体制の強化、また、現在も避難生活をしている方々の現状把握と地元自治体と連携した復興対策の強化の要望を行った。 4. 中央障害者社会参加推進センター事業の拡充  平成29年7月14日、各地方センターの障害者110番事業担当者等50人を対象に、衆議院第二議員会館内会議室(東京都千代田区)において、「障害者110番運営事業研修会」を開催した。午前は「障害者施策の動向とユニバーサルデザイン2020行動計画」をテーマに大平眞太郎(おおひらしんたろう)氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援振興室相談支援専門官)の講演を行い、午後は阿部一彦(あべかずひこ)日身連会長の進行で、障害を理由とする差別事例の対応や障害理解の促進についてグループ討議を行った。  平成30年3月14日、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)・中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体・者)合同委員会を東京都障害者福祉会館集会室(東京都港区)において開催した。国からは加藤晴喜(かとうはるひさ)氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室室長補佐)に出席いただき、平成29年度事業活動と平成30年度事業計画を報告したほか、相談支援に係る体制強化や情報保障等について意見交換を行った。また、地方障害者社会参加推進センターと中央との連携強化により発展的な事業になるよう、引き続き、取り組んでいく。 5. 障害者相談支援事業の充実 (1) 研修事業(中央障害者社会参加推進センター事業)として、6ブロックで開催した身体障害者相談員研修会(延べ1,800人)に対し、講師派遣の調整、開催費の一部助成を行った。(開催状況/東北・北海道ブロック11月16日岩手県盛岡市、関東甲信越静ブロック7月21日山梨県甲府市、中部ブロック10月11日~12日石川県七尾市、近畿ブロック10月20日大阪府堺市、中・四国ブロック10月12日香川県高松市、九州ブロック11月30日沖縄県那覇市) (2) 平成30年2月1日、参議院議員会館(東京都千代田区)において、身体障害者相談員全国連絡協議会理事会を開催し、平成29年度事業報告・決算見込及び平成30年度事業計画及び予算案について審議した。また、身体障害者相談員活動の活性化に向けた取組強化についての検討のほか、相談員制度の周知や個人情報の取り扱いの課題等について議論した。 (3) 身体障害者相談員全国連絡協議会の会員にむけ毎年発行している『相談員会報』(平成29年度版第19号、8000部年1回)については、障害分野において関心の高かった記事や研修事業等の報告等を掲載し、相談活動につながる情報提供と共有に努めた。 (4) 日身連ホームページや機関紙『日身連』を通して、相談活動に役立つ記事や情報について分かりやすく提供することに心がけた。 6. 全国生活協同組合連合会・全労済助成事業  災害時における障害者の困りごと調査・理解促進事業として、平成30年3月3日、羽田空港国際線旅客ターミナルビル内ティアットスカイホールにおいて、日身連フォーラム「災害、その時私たちは...~災害から学ぶ、私たちの伝えたいこと、伝えたい思い」を開催した。午前は仮想避難所体験型ワークショップを行い、大地震発生時から1週間の間に発生しうる困り事とその対処方法等について協議しグループ発表を行った。午後は、「災害時における困りごと等に関するアンケート」(加盟団体対象)の調査結果の報告とシンポジウムを行い、フォーラムの最後に『提言』を発表し、後日、国会議員に提出した。ワークショップ全体進行/岩田孝仁(いわたたかよし)氏(静岡大学防災総合センター長、教授)、進行補佐/石川永子(いしかわえいこ)氏(横浜市立大学国際総合科学部国際都市学系まちづくりコース准教授)、サポート/横浜市立大学生有志。  シンポジウム講演報告、コメンテーター/東俊裕(ひがしとしひろ)氏(熊本学園大学社会福祉学部社会福祉学科教授、弁護士)シンポジスト/石川永子(いしかわえいこ)氏、岩田孝仁(いわたたかよし)氏、泥可久(どろよしひさ)氏(神戸市兵庫区自立支援協議会防災を考える部会会長)、野際紗綾子(のぎわさやこ)氏(認定NPO法人難民を助ける会プログラムマネージャー)、コーディネーター/阿部一彦(あべかずひこ)日身連会長、指定発言/土岐達志(ときたつし)氏(長崎県身体障害者福祉協会連合会会長)、藤井公博(ふじいきみひろ)氏(岩手県身体障害者福祉協会会長)、提言発表/平井晃(ひらいあきら)氏(横浜市身体障害者団体連合会理事長)。 7. 障害理解の周知啓発の促進  上掲のとおり、『第62回日本身体障害者福祉大会ぎふ清流大会』の政策協議やフォーラム等のほか、障害者の社会参加と障害理解促進の観点から、テクノエイド協会からの依頼により『シーズ・ニーズマッチング交流会2017』にブース出展協力した。  また、開催地の加盟団体のご協力を得て、内閣官房からの依頼によるユニバーサルデザイン2020行動計画に関する地域の方との意見交換会(熊本県熊本市、宮城県仙台市)や人事院公務員研修所において開催された課長補佐級等の行政研修に対し協力を行ったほか、消防庁が開催した情報伝達・避難誘導の試行訓練(東京都、神奈川県川崎市、京都市内の競技場、ホテル、空港等6個所)への参加協力を行った。 8. 日身連の基盤強化  社会福祉法人制度改革により社会福祉法人に求められる社会福祉の促進と、障害者施策の促進に向けた活動に努めた。さらに、日身連の重要課題である財政の安定化及び第1回定時評議員会での評議員議題提案について財政並びに施策検討委員会において協議・検討を行った。 (1) 組織体制に関する検討 加盟団体年会費(分担金)の見直しについては、財政検討委員会において検討を行い、分担金引上げではなく、現行の手帳加算を基準とした算定式の是正をはかるため、新しい算定基準(均等割+手帳割+事業規模割)による算定とし、5年ごとの見直しを含めて、平成31年度から施行することが第3回定例理事会並びに第2回定時評議員会において可決された。 また、第1回定時評議員会(平成29年5月30日)において評議員議案として提案された議案(①役員等の報酬に関する規程の一部改正、②理事定数に関する定款の一部改正、③評議員定数に関する定款の一部改正の提案)については、施策検討委員会において検討が行われているところであり、各加盟団体からの意見を踏まえ、平成30年度内を目途に検討結果の報告を行う。 (2) 財政基盤の強化 財政検討委員会において最重要課題として増収にむけた事業活動の検討を行っているところだが、実行に移せるよう取り組んでいく。また、にっしんれん事業所株式会社との協力関係の強化についても、引き続き、取り組んでいく。 (3) 政策機能の強化 正副会長会及び施策検討委員会を中心に、障害者施策等の動向に注視し、関係府省庁等の部会や委員会はじめ、政党等のヒアリング等において意見や要望提案に努めた。その他、民間団体や企業からの依頼については積極的に取り組むとともに、パラ駅伝(日本財団パラリンピックサポートセンター主催)の後援やパラリンピック関連の検討会等への参画のほか、講師派遣等も行う等、日身連の活動の周知広報等に努めた。 9. ホームページ及び機関紙の充実  ホームページ及び機関紙『日身連』を通し、日身連の活動の周知を図るとともに、障害者週間における各加盟団体の行事の取組や障害理解の促進にむけたユニークな活動の取組を紹介する等、地方からの情報発信にも積極的に取組む等、賛助会員の入会促進にむけた紙面作りに努めた。  機関紙『日身連』については、毎月8000部発行し、行政機関等障害福祉関連等、関心の高い記事の情報提供のほか、加盟団体の活動や日身連役員の紹介等といった興味をひく記事掲載に努めた。また、ホームページについては、閲覧しやすいレイアウトに心がけるとともに、機関紙と同様、日身連の活動や障害者施策等に関する記事の発信に努めた。   10. その他の関連事業 (1) ジパング倶楽部特別会員の取り扱い事業 加盟団体の協力によりJRジパング倶楽部特別会員の新規、更新等の受付業務(年間取扱い16,493件)を行った。また、会員等からの問い合わせや苦情等に対しては、JR東日本ジパング倶楽部事務局と連携し、迅速かつ適切な対応に努めた。 (2) 日本障害フォーラム(JDF)関連事業 JDFの代表として、また、構成団体の中軸として、障害者権利条約の実施推進に関する活動やイエローリボン等の普及等、啓発に関する活動等に連携して取組むとともに、JDFフォーラムの開催や集会等の企画、準備等に関し協力した。その他、障害者権利条約パラレルレポートの作成準備についても連携し取り組んだ。 (3) 全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会関連事業 協議会の会長として、障害分野に関する諸課題や検討事項等について十分に取り組めるように協力したほか、セミナーの企画等の協力に努めた。