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障害者8団体と厚労省の勉強会報告(2月12日開催) 2004/02/19
  先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月12日の午後4時より開催した。

 前回の厚労省の話し合いでは、「介護保険の現状と今後の方向性」について高橋紘士氏(立教大学教授)から話を伺い、ディスカッションを行った。今回も、先に池田省三氏(龍谷大学教授)から介護保険の話を伺うとともに、障害者団体の持つ課題も含めて議論することとなった。

 前回からの課題であった障害者団体側の今後の検討における共通の認識を作っていくための作業として、23日に勉強会を行うことを確認した。事前に各団体から課題をあげてもらい、障害者団体に共通する課題とそれぞれの団体の固有の課題について、事務局で論点整理をすることとなった。

 午後5時からは、村木企画課長をはじめとする障害福祉部と、前回に引き続き老健局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険課)の出席のもと話し合いを行った。

 まず、池田省三氏が「介護保険-その思想とシステム-」と題する資料に基づいて話をされた。概要は以下のとおりである。

●介護保険の思想と理念は理解されていない。介護保険は普遍主義、自立支援、共助の思想でできている。介護保険のニーズ判定は、個々の要介護度のみで行い、所得や家族の有無とは関係がない。利用者の選択と契約に基づき、行政処分ではない。普遍主義は費用負担ついても適用され、全ての人が1割を負担する。

●介護保険は、予算主義(あらかじめ決まった中での配分)から決算主義(出来高による財源確保)に転換した。普遍主義を担保するには決算主義にしなければならない。

●在宅サービスを利用している人の金額は支給限度額の約4割だが、それでもドイツより水準が高い。在宅サービスの支給限度額は特別養護老人ホームに入ったのと同じ金額に設定している。また、35万円は平均的な勤労世帯(年収600万円世帯)の可処分所得と同水準である。介護保険では現在の支給限度額ではあまり問題がおきていない。限度額を越える人は市町村が独自にやるか、自己負担でサービスを買っている。

●介護保険はすべてのニーズをみたせるわけではなく、1割の自己負担できない人、痴呆で契約が難しい人などの問題がある。制度はメインシステムとサブシステムがあって、その補完関係である。介護保険のメインシステムは普遍主義でできていて、そこででてくる問題にはサブシステムが用意されている。

●特定ニードへの支援をどうするか。配食サービスは保険給付になじまない。しかし、配食サービスが必要な人がいるので自治体が実施している。軽い痴呆でお金の管理が必要な場合は地域福祉権利擁護事業がある。虐待がある場合、措置で対応することもできる。

●自立支援の考え方は、魂の自立が人間の尊厳であるということ、人間は何者にも支配されず、自らの意思で決定する。これを回復するのが介護保険である。これまでの福祉は、家族モデル(依存)と病院モデル(管理)しかなかった。サービスの利用料は無料・低廉ので、あくまでも与えられるサービスだった。介護保険は自己決定が先にあって、必要な社会的な支援が受けられる仕組みである。

●従来は、心身機能の低下によって自己決定できなくなり保護になっていた。自己決定を実現することが、介護保険が目指すケアである。自己決定を回復するとケアは上手くいく。良質な介護事業者はそれを考えている。痴呆性高齢者は自己決定がないがしろにされているために、それが問題行動として現れる。痴呆性のケアは自己決定の回復が重要なテーマになる。

●ケアの対等関係は、費用を自分で払うという事で担保される。有償ボランティアはお金を払うことで使いやすくなった。障害者の主張するダイレクトペイメントと共通する。

・障害者と介護保険が出会えば、支援型の介護ができるので、期待している。支援型介護は高齢と障害とで共通した理解ができる。

●自助、互助、共助、公助については、個人ができることを行政が行ってはけない、市町村ができることを都道府県が、都道府県ができることを国がやってはいけないということ。問題が起きたときにまず解決を迫られるのは本人(自助)で、次に家族・友人(互助)である。しかしこれには限界があり、全てが解決できるわけではないので、次に共助が必要となる。ヨーロッパでは教会が担っていて、日本ではかつては村落共同体が担い、都市化が進む中で企業、労働組合などの職域コミュニティが担ってきた。それでも解決できないことについては行政(公助)の支援で行う。

●日本は共助と互助の区別がついていない。措置制度が介護保険に替わったのではなく、介護保険は失われた共助システムを作った。家族は本来の役割に立ち戻る事ができた。介護保険が全てをやるわけではなく、介護保険でカバーできないものについては公助がカバーする。

●介護保険料は約3200円。訪問介護は4020円で、介護保険は40歳以上の人が月1回訪問介護をしていることと考えられ、その分を保険料として負担しているということになる。

●介護保険は、本来、保険者の規模が大きいほうが財政が安定する。諸外国では全て国が保険者である。しかし、本当の地域ケアシステムは市町村しかできない。北欧型の福祉は市町村が責任を持っており、日本も同じである。国家が責任を持つのでなく、地域がケアをする。考え方によっては、日本はドイツの介護保険を使いながら、北欧システムを実現できている。


 続いて、老健局の宮崎課長補佐から前回、障害者団体側からでた質問について、資料をもとに説明がなされた。

●前回、自立の理念が2つあるという話があったが、介護保険法の自立の理念は、”その有する能力に応じ自立した日常生活を営む”という意味での自立である。要介護認定の自立は法の理念と意味が違っていて、本来は”非該当”が妥当な表現だと考える。

●介護保険制度は4年目を迎え、15年度から要介護認定を改定している。痴呆性の高齢者の認定が低く出ているという批判があったので、改めて痴呆の評価をより適切に出来るようにした。概ね7割のかたが納得してもらえている。また、推計されたケアと実際のケア時間が比例しており、要介護認定のシステムは改善されてきている。

●痴呆性高齢者のケアをどうしていくかが大きな問題であり、要介護認定を受ける人の半分は痴呆が見られる。高齢者の1割が痴呆をもつという調査結果もあり、ケアの転換も必要である。痴呆性高齢者のケアは尊厳の保障、生活をもとにケアを組み立てていくという指摘を受け、日ごろ、住み慣れた場を基本としてケアを組み立てていく。介護保険を変えていかないといけない部分である。

●支給限度基準額については、平均利用率は概ね35%~50%であり、限度額を超えた部分については、各保険者で独自に行っている。上乗せを行っている保険者は27保険者であり、約1%である。実施している市町村の数が少ないのは第1号保険者の保険料を財源とするため、保険料にはねかえってくることの影響もある。また、身体障害者手帳をもっている場合は、支援費から給付を受けていることもある。

●横出しを実施している保険者は、介護保険の枠内については、市町村特別給付(寝具乾燥、移送サービス、配食サービス等)として115保険者、保健福祉事業(介護者相談、健康づくり事業等)として158保険者である。全体の4~6%で取り組みとしては多くない。これ以外にサブシステムとして市町村が実施しているところは多い。

 これらを受けて、参加者とのディスカッションがなされ、
●家族(互助)については、障害者運動は家族介護が得られなくても、重度であっても一人暮らしできるように進めてきた。介護保険のサービスメニューを検討していた時に、一人暮らしの重度の障害をもつ者のメニューは検討されていなかった。自助と互助がまだ分離されていない問題がある。

●障害者が求めるものは社会参加、生活支援であり、介護に限定されない。社会参加のサービスが保険制度になじむのか。

●介護保険は、その前に10年間のゴールドプランがあって基盤整備がされてできた。障害者のサービスも、まず基盤整備に取り組むべきではないか。

●介護保険もこれから改善されるものであり、支援費と統合してどこまで整理できるのか先が見えない。

●社会政策は法律・システム・財政の視点が必要で、障害者福祉は法律が弱い。福祉法が3障害にわかれている、障害認定制度や所得保障が不十分である。財源論だけでは崩れる要因になる。大事なのは扶養義務で、これが公的責任をあいまいにしている。国民的な議論になるが、せめて厚労省の中で自立を理念とするなら扶養義務の問題を考えて欲しい。などの意見が出された。

 質疑の中で池田氏から介護保険と障害の統合については三段階があるということで、「来年、介護保険法が提出されて、その翌年が介護保険の第3期になる。そこに障害者サービスをいれられるかというと無理である。時間的な経過で3つのステージがある。支援費は財政面の問題があり、まずこれを緊急的に財源で支える。次に、サービスの供給体制がおいついていないので、高齢者と障害者のサービス提供者を統合することのメリットがある。第三ステージは保険給付をどうするのかを考え、障害者の吸収合併でなく、対等合併を行う。要介護認定、支給限度額、介護保険でできないサービスをどうするかを考える。そういう意味の三段階の統合のステージがある。」との考えが説明された。

 前回、今回と2回にわたって介護保険を中心とした議論がなされた。これを踏まえ、次回は19日に介護保険と支援費の関係について、具体的に障害者団体側と厚労省で議論していく予定である。


(編集人・三澤了(DPI日本会議))

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