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障害者8団体と厚労省の勉強会報告・詳細版
(3月4日開催)
2004/03/11
  先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月4日の午後4時より行った。

 今回は研究者の北野誠一氏の話を伺うとともに、前回からの厚労省との話し合いの中での疑問点についてさらに議論を深めていくこととなった。
 また、3月3日に開催された社会保障審議会障害者部会の中でも介護保険と障害者施策についての議論がなされており、その報告も行われた。

 午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から渡辺企画官、宮崎課長補佐の出席のもとで話し合いを行った。

 最初に、北野誠一氏から「支援費制度と介護保険制度の展望」とした資料をもとに以下の話がなされた。

・支援費と介護保険を語るときに、ケア・介護・介助・支援・パーソナルアシスタントという言葉を用いるが、人によって言葉のイメージが違っている。それぞれの言葉の定義をした上で議論しないと内容が深まらない。

・介護保険法は“介護”の明確な定義がなく、サービスのメニューを列挙することにとどまっている。知的障害者福祉法が“知的障害者”を定義していないのと同様、介護を定義せずに法律が成立していることが様々な問題を生んでいる。

・世界障害者問題研究所ではパーソナルアシスタントの定義を「本人が選んだ生活において、通常は本人がする(はずの)ことを、障害があるために他者が直接援助すること」としており、この定義は全ての障害者・高齢者の持つニーズに対して普遍的な定義である。

・“自立”概念はさらに違っており、共通の定義を作る必要がある。「福祉自治体ユニット改革への提言」での自立概念は“残存能力の維持・向上”で医療・リハビリテーション的な定義である。一方、10年前に出された「高齢者介護・自立支援システム研究会報告書」の自立論は当時としては画期的であり、重度の障害を持つ高齢者も外出し、社会参加し、生活を楽しむことが介護の基本理念とされている。ただ、在宅での生活のイメージが中心で、障害者のように社会にでていって活動するというビジョンが弱かった。このビジョンをもたないと高齢と障害をあわせたサービス、地域生活支援保険には結びつかない。

・今、厚労省では様々な検討会をやっているが全体のビジョンを示すことが重要である。生活保護の検討会では、扶養義務規定、他人介護料、住宅扶助の単給、救護施設の問題がある。障害者者総合福祉法の制定も必要である。医療保険も見直されており、介護保険と統合して高齢者医療介護保険の構想もあり、この構想と高齢者と障害者の統合の構想はどのような関係になるのか。
 また、権利擁護についても、消費者保護基本法の改正が検討されており、団体訴訟制度の導入が検討されている。この流れで、障害者差別禁止法も真剣に議論すべきである。知的障害者入所更生施設の指定基準にも地域移行計画の作成が義務付けられた。これの実効性を担保するためには差別禁止法が重要である。手話通訳などの情報保障にとっても差別禁止法は重要である。
 費用負担で応益負担を求めていくなら、所得保障がセットであり、就労支援を進めていく必要がある。法定雇用率と差別禁止法は法的に両立できる。

・介護保険の問題については、要介護認定の仕組みと介護給付額の2点が決定的な問題である。要介護認定で、痴呆、知的障害者、コミュニケーションの支援をするとしたら、細かい設定が必要となる。また、要介護認定は施設での介護時間の調査であって、施設なら入浴介護は食事介護より時間が短くてすむが、在宅では入浴のほうが時間がかかる。

・支給限度額の中でのサービスの選択となると、痴呆専用デイサービスは単価が高くて利用時間がすくなるという質と量がトレードオフになる。

・要介護度5の認定に、一人暮らしの重度障害者を想定していたら、もっと支給限度額は高くなっていたはずである。介護保険の守備範囲を明確にして、一人暮らしの重度障害者をモデルとして想定しないなら、他にどういうシステムを想定するのか示すべきである。

・グループホームの単価を他の国の単価と比較した場合、アメリカではグループホームの単価は12通りあり、一番高い単価は100万近くになる。民間のサービスがグループホームをやっているので、単価が低いと契約をしてもらえない。低い単価だとサービスの質が落ちて、人権侵害がおこる。
 しかし、アメリカ方式にすると、同じ単価(同じ障害)の人ばかりになって、ノーマライゼーションに反する。日本のように、個人ごとに支援費を出すのは世界的にすぐれた制度である。グループホームでも一人一人のニーズに応じて、ホームヘルプ、ガイドヘルプをつけられる日本方式のよさをいかして欲しい。

・ケアマネジメントの問題は、民間の事業所がケアマネジメントをやっており、公正中立を担保できていない。また、知的障害者、聴覚・視覚障害者、精神障害者、重度身心障害者の全部をケアマネできる人はいないので、様々なものがあって消費者に選択をまかせるのがいい。カナダのブリティッシュコロンビア州は幅広いコンサルティングの仕組みをもっており、サービスの自己管理モデルから一部自己決定・自己選択モデル、専門職への委任モデルまで、幅広い仕組みをもっている。日本の介護保険のケアマネジメントは多くある選択肢の一つであり、当事者主導の自立支援マネジメントの可能性も問われている。

 続いて、間課長補佐より、資料に基づき費用負担について、措置制度・精神障害者・支援費制度・介護保険を比較しながらの説明があった。
措置制度、支援費制度はサービスにかかる費用の負担は援護の実施者である市町村であり、市町村に対して国及び都道府県が補助をする仕組みになっている。利用者負担の範囲は障害者本人と扶養義務者である。負担額は応能負担で費用徴収表によって決まっていて、限度額がある。
介護保険は保険給付については保険者である市町村であり、保険給付以外が利用者負担となる仕組み(保険給付が9割であるので、残りの1割が利用者負担)になっている。利用者負担の範囲は利用者のみである。負担額は応益負担であり、介護保険の利用者負担にも限度額がある。

 応能負担の仕組みでは扶養義務者からの費用徴収の問題がでてくる。また、サービスを使っている人と使っていない人との差をどう考えるかも問題である。
 高齢者サービスが措置制度であった時には応能負担であり、多くの人は利用者負担を払っていなかった。介護保険導入時には、それまで使っていた人で生計中心者が所得税非課税者の場合は、1割の利用者負担を3%、6%と段階的に引き上げる経過措置を行った。さらに生計中心者が市町村民税世帯非課税者等の場合に、社会福祉法人が市町村と相談して利用者負担を半分もしくはゼロにでき、その一部を国と都道府県が補填する仕組みも作った。また、生活保護の介護扶助のみ適用する単給の仕組みもある。ストック、フローはないが、生活保護を受けるまででもないという人をどうするかは課題で、所得保障との話とも絡んでいる。

 その話を受けて、障害者団体側と厚労省とで以下の意見交換がなされた。
 障害者団体からは

・北野さんが話された「介護」「自立」の定義や要介護認定、ケアマネジメントの指摘をどう考えるか。

・護保険の利用者負担は本人負担のみと言うが、利用者負担の減免では生計中心者が非課税という条件があり、扶養義務の考えがでてくる。支援費は扶養義務者の対象に親が外れたが、介護保険では親元で暮らす人は減額にならない。

・地域生活移行をどうするかが重要な政策課題であって、親元から、施設から地域へ具体的にどういう道筋がつくれるのか。
などの意見がだされ、これに対して厚労省からは以下の意見がだされた。

・「2015年の高齢者介護」の中では痴呆性高齢者のケアを考えて、これからの介護は生活全体を見ていくとしている。サービス体系、ケアのメニューについも考えていかなければならない。若い障害者と高齢者を比較すると社会に対するかかわり方は違うかもしれないが、高齢者も外出や社会的自立の観点は必要である。

・要介護認定の仕組みは客観的にニーズを図るものであり、介護保険の大きな成果である。その基準は障害者を考える際にはデータをもとに見直す。高齢者介護においても、緊急時の対応、医療ニーズへの対応などの課題があって試行錯誤している。

・ケアマネジメントの課題は認識として持っていて、一人のケアマネージャーがあらゆる障害のマネジメントを行うのは難しいのではないか。専門家がチームを組んで解決する体制が重要である。

・減免には税をあてているので、扶養関係が問われてくる。住民税非課税と生活保護世帯の間にもいろんなかたがいるので、障害者をいれる場合は低所得者をどう考えるかを議論しなければいけない。

・どの制度かを問わず、地域生活支援を進めていくことは重要である。現在、施設に入っている人が施設を出る時は、皆さん並々ならない決意をしている。そのきっかけは、地域での障害者の仲間と出会いであり、そういった機会をどう作り、また、出たいと思った時のサポートやシステムをどう作っていくか。施設の人が外にでて、地域の人と交流する仕組みをガイドヘルプやそれ以外の方法も含めて考えないといけない。

 これまで厚労省との6回にわたる討議において双方の意見交換を行ってきたが、今後も引き続き、週1回のペースで話し合いを行うこととなった。次回は、障害者団体側で現時点での質問をとりまとめて、それをもとにさらなる議論を続けることとなった。次回は3月11日(木)を予定している。

(編集人・三澤了(DPI日本会議))

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