今通常国会に上程された「高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案」(以下、促進法案という)の審議を進めている参議院の国土交通委員会(羽田雄一郎委員長)は、4月20日に、専門的な見地を持つ障害当事者らを参考人に招致し、ヒアリングを実施しました。
日身連からは小川榮一会長が出席し、促進法案について大局的な視点から言及。「地域における一体的・連続的なバリアフリー化が進む」として、大きな期待感を表明。その上で、関係省庁の連携強化による政府一体となった取り組み、学校教育・社会教育を通じたバリアフリー意識(心のバリアフリー化)の啓蒙・普及、悪質な民間業者への罰則強化、オストメイト対応の多機能型公衆トイレの設置促進、緊急時でも対応できる文字表示や音声案内のいっそうの普及など、多岐にわたる個別課題の早期解決を訴えました。(以下に、日身連がヒアリングにあたって提出した促進法案への要望を掲載)
政府では、今国会中の法案成立をめざしています。今回のヒアリングを基に、中身のある議論の継続が求められます。
(資料)
平成18年4月20日
高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案に対する要望
参考人
社会福祉法人
日本身体障害者団体連合会
会 長 小川 榮一
Ⅰ. はじめに
平成6年に制定された「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律(ハートビル法)」及び平成12年に制定された「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」等により、これまでに駅、バスターミナル、空港等旅客施設での段差の解消や視覚障害者誘導用ブロックの設置、身体障害者用トイレの設備、公共交通機関のバリアフリー化の推進等、私たち障害者が、公共交通機関を利用して移動する際の利便性並びに安全性の向上が、一段と進んできていることについて高く評価するものです。
そして、この度、上掲両法の対象外であった道路、路外駐車場、都市公園を追加、新設・改良時のバリアフリー化を義務付け、これら既存施設や百貨店、病院、福祉施設等、既存建築物のバリアフリー化も努力義務の対象になる本法案は、障害者にとり、社会参加の促進に大きく前進するものとなります。
地域における一体的・連続的なバリアフリー化の向上となる本法案の制定に、大きな期待をよせるものであります。
Ⅱ. 施策に関する基本的視点
1. ユニバーサル社会の実現
2. 限定されない行動範囲のための連続的な移動経路の確保
3. 本法案と関連するバリアフリー促進施策の関係省庁の連携強化による政府一体となった着実な強化
4. 国民のバリアフリーに関する意識の向上に向けた心のバリアフリーへの積極的な取組み
5. バリアフリー化の取組みに対する支援の充実強化
6. 市町村の基本構想策定と事業実施にいたる全ての段階における当事者参画の徹底
7. 障害者基本法、障害者自立支援法にあるような三障害を対象としたバリアフリー施策の展開
8. 学校教育、社会教育を通じたバリアフリー意識の啓蒙・普及
9. 選挙権の行使にかかる建物やアクセス等、バリアフリー化の促進
10.国連で審議中である障害者権利条約並びに条約に基づいて制定されるであろう障害者差別禁止法と整合性のあるバリアフリー施策の展開
11.東横インの例をみるまでもなく、悪質な業者に対する罰則の強化
Ⅲ. 基本的施策の視点
1. ハード面の整備
(1) 旅客施設・車輌等における整備
① 駅等における転落防止設備(ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロック等)の整備
② 1日平均利用者数5千人未満の旅客施設におけるエレベーター及びエスカレーターの設置
③ 時間制限せず常時利用できる上下双方向のエスカレーターの整備
④ 車いす利用者やオストメイトが利用できる多機能型公衆トイレの設置及びトイレまでの動線のバリアフリー化の整備
⑤ 旅客施設及び車輌内における日常だけでなく緊急時等にも対応できる音声や文字表示案内や職員の対応の整備
⑥ 福祉タクシーの導入の一層の促進
⑦ 車輌内における電動車いすを含む車いすスペースの確保
⑧ コミュニティーバスや観光バス、高速バス等を含めたノンステップバス導入の一層の促進
⑨ 旅客船や旅客機内における通路やトイレ等バリアフリーの促進
⑩ 旅客機利用の際する電動車いすの対処方法の配慮
⑪ ターミナルビル内の搭乗口とロビー間のカート等による移送補助
⑫ 駐車場とターミナルビル間の移動手段のバリアフリー化の促進
(2) 道 路
① 歩道橋へのエレベーター設置の義務化
② 歩道の整備
ⅰ.歩道幅の拡大
ⅱ.放置自転車等に対する罰則
ⅲ.点字ブロック設置の促進
③ 音声信号機設置の普及促進
④ 電柱や道路上の看板等の撤去
⑤ 屋根付駐車場の整備促進及び電動車いす等が使用できる駐車スペースの拡大
(3) 建築物
① 床面積2千平米未満建築物の新築及び増改築に関するバリアフリーの義務化
② 敷地内及び館内における誘導ブロックの設置や車いす利用者を配慮した動線の整備
③ エレベーター前やトイレ内等における音声情報案内の整備促進及び案内係等要員の教育・指導
④ 緊急時における誘導対応の教育・指導
⑤ 共同住宅、学校におけるバリアフリーの義務化
2. バリアフリーに対する国民意識の啓発
(1) 障害の様態や障害者に対する正しい理解のための育成
(2) 「心のバリアフリー」の育成
(3) ユニバーサル社会実現への啓発
(4) 公共の場におけるマナー意識の啓発
Ⅳ. 支援措置(基本的基準の適合)
1. 各種補助金の交付
2. 地方公共団体の助成を実施する場合の地方債の特例
3. 固定資産税等の課税の特例
以上
|