平成 28年度(2016年度) 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告 平成 28年 4月、障害者差別解消法および改正障害者雇用促進法が施行し、地域で 障害を理由とする差別禁止と合理的配慮の提供に対する理解が着実に促進されるこ とが肝要であることから、日身連では、障害者差別解消法の理解促進にむけた事業に 取り組むとともに、国等の会議において当事者団体としての視点から提言を行った。 また、熊本地震で被災した障害者への支援対策や、障害者施設での痛ましい殺傷事件 は、障害者に対する無理解や偏見等を含め重い課題が明らかになり、日本障害フォー ラムとも連携し要望活動を行った。 一方、社会福祉法人制度改革により社会福祉法人に課せられる事項に対しては、適 切に対処できるよう加盟団体を対象に勉強会を開催したほか、情報の共有にも努めた。 定款の改正については、厚生労働省の指導のもと、正副会長会を中心に協議検討を重 ね、予定通り、年度内に厚生労働大臣の認可を受け、新定款に基づき、新評議員の選 任を行った。 日身連の最重要課題である財政の安定化の問題については、継続して検討を行って はきたが、社会福祉法人制度改革により定款の改正、さらには社会福祉充実残額の問 題等の検討を優先せざるをえなかった。日身連の財政問題について具体的な提案を示 すことができなかったことを猛省し、今後もしっかりと取り組んでいく。 主な事業: 1.『第 61回日本身体障害者福祉大会きょうと大会』の開催 平成 28年 5月 11日(水)、12日(木)の二日間にわたり、日身連ならびに京都 府身体障害者団体連合会、京都市身体障害者団体連合会主催により京都府総合見本 市会館(京都府京都市)等において全国から約 2700人の会員参加者を迎えて盛大 に開催した。 大会初日(11日)は、「地域福祉の推進にむけた日身連の役割について~社会福 祉法人制度改革と障害者差別解消法の実施にむけ~」をテーマに政策協議を行った。 政策協議では、まず、「社会福祉法等改正の概要について」と題し、田中徹(たなかとおる)氏(厚 生労働省社会・援護局福祉基盤課社会福祉法人制度改革推進室室長)の基調講演を 行った。シンポジウムは、金政玉(きむじょんおく)氏(兵庫県明石市福祉部福祉総務課障害者施策担 当課課長)、竹下義樹(たけしたよしき)氏(弁護士、日本盲人会連合会会長、京都市身体障害者団体 連合会副会長)、中原義隆(なかはらよしたか)氏(福岡市身体障害者福祉協会会長)をシンポジストに、 田中駒子(たなかこまこ)氏(内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付企画官(障害者施策担当)) をコメンテーターに、阿部一彦(あべかずひこ)日本身体障害者団体連合会会長の進行で行った。 二日目(12日)は、大会式典と議事を行った。式典では、各加盟団体から推薦を 受けた 54名に会長表彰が授与された。議事では、平成 27年度事業報告および平成 28年度事業計画の報告と、大会宣言および大会決議が満場一致で採択された。 2.国および政党等に対する要請行動および審議会等への積極的参画 (1)内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会および労働政策 審議会障害者雇用分科会の委員として参加し、意見や提案等に努めるとともに、 加盟団体への情報提供にも努めた。 (2)2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会にむけて、国や大会組織委員会、 競技会場関係が開催した委員会等に委員として参加した。また、大会以降のレガ シーとして残していくための施策を実行するために設けられたユニバーサルデザ イン 2020関係府省庁等連絡会議街づくり分科会および心のバリアフリー分科会 へも参加し、公共交通機関や構造物等の整備や心のバリアフリーの推進等にむけ た意見や提案に努めた。 (3)国に対する『日身連要望事項』については、理事会の審議を経て、正副会長会を 中心に各ブロック等から提出された要望事項を取りまとめ、関係省庁からの文書 回答を求め要望書を提出し、後日、関係省庁からの回答を冊子にまとめ、各加盟 団体に配付する。 (4)津久井やまゆり園の事件に対する対応や熊本地震の被災障害者への支援対策につ いて、日本障害フォーラム(JDF)や被災地の加盟団体等と連携して取り組んだ。 心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、JDF、全国障害者団体 定期刊行物協会連合会と連携し、総務省、厚生労働省、郵便事業株式会社と交渉 を行ったが、解決には至らず、継続して協議を行っていく。 (5)そのほか、国や関係機関からのアンケートやヒアリングなどの協力要請に対して は、加盟団体等の協力を得て、積極的に取り組んだ。 3.災害時に関する対応 上掲のとおり、平成28年4月に発生した熊本地震について、現地視察を行うとと もに、熊本県や熊本市に対し、被災障害者の避難の実態や適切な支援対策について 申し入れを行った。また、発生後、日身連内に災害対策本部と被災地対策本部を立 て対応の検討を行うとともに、加盟団体のご協力を得ながら支援金募金を行い、募 金のうち第一次支援金として、平成28年10月28日、1,000万円を熊本県身体障害者 福祉団体連合会へ送金することができた。 4.中央障害者社会参加推進センター事業の拡充 (1)平成28年6月30日、各地方センターの障害者110番事業担当者等60名を対象に、 衆議院第二議員会館内会議室(東京都千代田区)において、「障害者 110番運営事 業研修会」を開催した。午前は、「発達障害への理解と合理的配慮について」をテ ーマに橋口亜希子(はしぐちあきこ)氏(発達障害ネットワーク事務局長)の講演、午後は、合理的 配慮の理解啓発DVD『どうかえる、あなたの暮らしとまちづくり』を上映、尾上 浩二(おのうけこうじ)氏(内閣府障害者施策アドバイザー)から「障害者差別解消法について」の 講義と、「障害にもとづく差別や合理的配慮の提供に関する相談」をテーマに阿部 一彦(あべかずひこ)会長が進行役にグループ討議を行い、意見交換や交流を含め、実践的な研修 を行った。 (2)平成 29年 3月 24日、中央障害者団体および学識経験者等で構成される中央障害 者社会参加推進協議会(14団体)・中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体・ 者)合同委員会を東京都障害者福祉会館集会室(東京都港区)において開催した。 国からは度会哲賢(わたらいてっけん)氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振 興室室長補佐)に出席いただき、平成 28年度の事業活動の報告と平成 29年度の 事業活動について報告したほか、ユニバーサルデザイン 2020行動計画の実施にむ けた動きなどについて意見交換を行った。 (3)地方障害者社会参加推進センターと中央との連携強化について具体的な提案を示 すことができなかったが、上掲行動計画に「地域に根差した心のバリアフリーを 広めるための取組」のなかで、連携組織の一つに地方障害者社会参加推進センタ ーを挙げていただけたことを踏まえた事業活動につながるよう取組んでいく。 (4)障害者施策の動きやセンターの実施事業については、機関紙『日身連』を通し、 情報の提供と共有に努めた。 5.障害者相談支援事業の充実 (1)研修事業(中央障害者社会参加推進センター事業)として、6ブロックで開催委 した身体障害者相談員研修会(延べ 1662人)に対し、講師派遣の調整、開催費の 一部助成を行った。(開催状況/東北・北海道 11月 17日宮城県仙台市、関東甲信 越静 7月 10日新潟県新潟市、中部 10月 11日~12日愛知県豊橋市、近畿 10月 31 日京都府京都市、中・四国 10月 6日鳥取県鳥取市、九州 11月 17日~18日長崎 県長崎市) (2)平成 29年 2月 9日、参議院議員会館(東京都千代田区)において、平成 28年度 身体障害者相談員全国連絡協議会協議会に関する平成 28年度の事業報告・決算見 込みおよび平成 29年度事業計画および予算案、九州ブロック選出理事の交替を議 題に理事会を開催した。会議では、身体障害者相談員と各加盟団体の連携体制の 充実と相談員の周知を含め、地域で相談員が十分に活動できる仕組み等が議論さ れた。 (3)身体障害者相談員全国連絡協議会会員にむけた情報誌『相談員会報』(平成 28年 度版第 28号、8000部年 1回)を通し、協議会や日身連の研修事業等の報告や障 害者差別解消法のポイント解説等を掲載する等、情報の共有を図った。 (4)また、日身連ホームページや機関紙『日身連』を通し、相談活動につながる情報 を提供した。 6.中央共同募金会助成事業 障害者の差別禁止と合理的配慮の提供に関する理解促進事業として、バリアフリ ートイレの考察と障害理解の促進を目的に、フォーラム「TOKYO・バリアフリート イレ de街づくり~2020、そしてその先へ~」を平成 29年 2月 28日、羽田空港国 際線旅客ターミナルビル内ホールにおいて、180人余の参加者を迎え盛大に開催 した。プログラムは、①体験談「トイレと私」(スピーカー/犬島朋子(いぬじまともこ)氏(東京オ リンピック・パラリンピック競技大会組織委員会大会準備運営第一局パラリンピ ック統括部パラリンピック統括チーム)、田口亜希(たなかあき)氏(パラリンピック射撃アテネ、 北京、ロンドン大会日本代表)、小西慶一(こにしけいいち)氏(東京都身体障害者団体連合会会長)、 コーディネーター/大胡田誠(おおごだまこと)氏(弁護士))、②調査報告(発表者/平井晃(ひらいあきら)(氏(横 浜市身体障害者団体連合会理事長、齋藤朱里(さいとうあかり)氏(東洋大学学生)・手塚夏美(てづかなつみ)氏(東 洋大学学生)、加藤篤(かとうあつし)さん(日本トイレ研究所代表理事、③シンポジウム(シンポ ジスト/長井総和(ながいのぶかず)氏(国土交通省安心生活政策課長)、東俊裕(ひがしとしひろ)氏(弁護士、熊本学 園大学教授)、犬島朋子(いぬじまともこ)氏、太田冬彦(おおたふゆひこ)氏(東京国際空港ターミナル(株)旅客サービ ス部長兼 CS推進室長)、コメンテーター/加藤篤(かとうあつし)氏、コーディネーター/髙橋儀 平(たかはしぎへい)氏(東洋大学教授)。開会挨拶/小西慶一(こにしけいいち)氏(日身連副会長)、閉会挨拶/坂巻 煕(さかまきひろむ)氏(日身連顧問)のほか、羽田国際空港ターミナルビルの視察及びトイレの実 態調査を映像で紹介した。 7.障害者差別解消法の周知啓発の促進 上掲のとおり、『第 61回日本身体障害者福祉大会きょうと大会』の政策協議やフ ォーラム等のほか、障害者の社会参加と障害理解促進の観点から、テクノエイド 協会からの依頼により『シーズ・ニーズマッチング交流会2016』にブース出展協 力した。 8.日身連の基盤強化 社会福祉法等の一部改正に伴う定款改正について、厚生労働省や専門家に指導い ただき準備を進め、予定通り、年度内に定款の改正と新評議員の選任を行った。ま た、社会福祉充実残額等についても、正副会長会及び財政の安定化に対する検討委 員会を中心に協議を行った。 (1)社会福祉法等改正に伴う対応 定款改正等の作業準備のため、平成 28年 7月 28日に日身連内において検討準備 検討会を行い、税理士を講師に改正の概要や国の対応策等の情報把握と課題等に ついて確認作業を行った。また、厚生労働省主催の説明会だけでなく、直接、担 当者から指導を受け、準備をすすめた。その後、正副会長会を中心に、定款改正 にかかる作業を進める一方で、加盟団体に対しては、適時、状況報告を行った。 ※12月 1日の第 2回定例理事会および同月 15日の臨時評議員会において定款改 正案が承認可決、その後、厚生労働省へ定款改正を申請、平成 29年 2月 16日認 可。これに伴い、3月 8日に衆議院第二議員会館において評議員選任・解任委員 会を開催し、推薦された 65人全員が選任。 (2)財政基盤の強化 社会福祉法人制度改革に伴う対応に取組まざるを得なかったため、最重要課題で ある財政の安定化にむけた具体的な対策を提案することができなかった。次年度 は、新執行部体制になるが、財源の確保と健全な運営をめざし、課題解消に向け 取組んでいく。 (3)政策機能の強化 正副会長会を中心に、障害者施策の動向に注視し、参加している国の審議会や委 員会ならびに政党等の委員会やヒアリング等にも積極的に参加し、提言や提案に 努めた。その他、民間団体や企業との連携活動として、昨年に引き続き、パラ駅 伝(日本財団パラリンピックサポートセンター主催)の後援やパラリンピック関 連の検討会等にも積極的に参加し、日身連の活動の広報に努めた。 9.機関紙の充実 日身連から会員や関係者の方への情報発信である機関紙『日身連』を発行(毎月 8000部)し、行政機関等障害福祉関連の情報を分かりやすく提供するとともに、 加盟団体の活動や日身連役員の紹介等、会員の関心や興味のある記事を掲載し、 購買意欲を高める紙面作りに心がけ、会員の入会促進に努めた。 10.その他の関連事業 (1)ジパング倶楽部特別会員の取り扱い事業 加盟団体の協力によりJRジパング倶楽部特別会員の新規、更新等の受付業務(年 間取扱い 17248件)を行ったほか、会員等からの問い合わせや苦情等に対しては 迅速かつ適切な対応に努めた。 (2)日本障害フォーラム(JDF)関連事業 JDFの代表として、また、構成団体の中軸として、障害者権利条約の実施推進に 関する活動やイエローリボンの普及等啓発に関する活動等に連携して取組むとと もに、フォーラムの開催や集会等にも準備作業を含め協力を行った。また、津久 井やまゆり園の事件や熊本地震による被災者支援に対しても連携して取組んだ。 (3)全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会関連事業 協議会の副会長として、障害分野に関する諸課題に対する協議検討に努めたほか、 セミナー等の企画の協力にも努めた。 以 上