令和元年度(2019年度) 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告  2020年東京オリンピック・パラリンピック大会開催をひかえ、日本身体障害者団体連合会(以下、日身連という。)は、国や民間企業等の会議や意見交換等に積極的にかかわるとともに、障害理解の啓発促進に向け、日身連の活動に取り組んだ。また、日身連の活動を広く周知することに心掛け、内閣府連続セミナーへの参加や、民間団体の事業への協力等にも努めるとともに、来年予定されている国連障害者権利委員会の日本の国別審査に関し、日本障害フォーラム(以下、JDFという。)と連携し、パラレルレポートの作成等に協力した。  新型コロナウイルス感染症に対しては、2月に感染予防や法人運営の対応等に関する国からの情報を加盟団体へ提供し注意喚起を呼びかけたほか、JDFと連携し国への要請行動を行った。新型コロナウイルス感染症については、今後も国の情報に留意し、必要な対応を講じていく。  日身連の重要課題とされる財政や組織体制の安定強化については、財政の安定化に対する検討委員会(以下、財政委員会という。)並びに組織体制強化及び障害者施策等に関する検討委員会(以下、組織施策委員会という。)を中心に課題解消に向けた提案等を行う等目的の達成に向け取り組んだ。   日身連の主な事業: 1. 『第64回日本身体障害者福祉大会あきた大会』の開催  令和元年5月22日(水)から23日(木)の二日間にわたり、日身連並びに秋田県身体障害者福祉協会主催により全国から1,500人超の参加者を迎え、秋田キャッスルホテル及び県立武道館(秋田県秋田市)を会場に盛大に開催された。  大会初日(22日)は、第1回定時評議員会および政策協議(テーマ:改正バリアフリー法への期待~地域間格差ない環境整備に向けて~)を開催した。政策協議では、「我が国のバリアフリー政策について」と題し、奈良裕信氏(国土交通省総合政策局安心生活政策課課長)に基調講演を、シンポジウムはシンポジストに伊藤英紀氏(秋田県身体障害者福祉協会会長)、浅香博文氏(札幌市身体障害者福祉協会会長)、土岐達志氏(長崎県身体障害者福祉協会連合会会長)、そして、阿部一彦(日本身体障害者団体連合会会長)、コメンテーターに奈良裕信氏、進行を荻津和良氏(組織施策委員会委員長、茨城県身体障害者福祉団体連合会会長)で行った。  二日目(23日)は、大会式典及び議事を行った。式典では、53名の方に日身連会長表彰が授与された。議事では、平成30年度事業報告及び令和元年度事業計画が報告され、大会宣言、大会決議が満場一致で採択された。 2. 国及び政党等に対する要請行動並びに審議会等への積極的参画 (1) 障害者政策委員会(内閣府)、社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会(厚生労働省)のほか、国土交通省他関係府省庁において開催された委員会や検討会等に参画し意見具申に努めた。特に、オリンピック・パラリンピック大会開催にむけ、ハード・ソフトにおけるバリアフリー関連施策の検討がさらに加速する中で障害のある人の視点からの適切な提案・意見に努めた。 (2) 障害者雇用の水増し問題に関しては、障害者雇用促進法の一部改正案が審議されるなかで参議院厚生労働委員会に参考人として出席し、障害のある人の活躍できる職場のあり方とそのための適切な対応や配慮について意見具申した。 (3) ユニバーサルデザイン2020行動計画の完全実施に向け、公共交通機関や小規模店舗、ICT活用、情報保障等に係るバリアフリー化の在り方や促進に加え、特別支援教育や読書環境整備促進等に関し設置された委員会等に参加するとともに、会議の内容や国等の動きなどに関し加盟団体との情報共有に努めた。 (4) 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催にむけて開催された府省庁及び組織委員会等関係機関での会議では、心のバリアフリーの正しい理解と啓発等についての提言に努めた。そのほか、『東京2020パラリンピック1年前カウントダウンセレモニー』に出席する等、多方面にわたり連携協力を行った。 (5) 心のバリアフリーの推進に関しては、中央省庁や政党、民間事業者との協議や意見交換の場において、市民社会の一層の理解啓発と促進が図られるよう提案に努めた。また、国や関係機関からの実証実験やヒアリング、アンケートへの協力のほか、一般企業や大学関係者等との意見交換にも積極的に努めた。  ※ユニバーサルデザインタクシー試乗会(日産本社・国交省)、ヒルトン東京ベイバリアフリールーム等館内視察及び意見交換 (6) 国に対する『日身連要望事項』については、理事会の審議を経て、正副会長会及び組織施策委員会において要望事項の内容の取りまとめを行ったが、新型コロナウイルス感染症の影響により要望書の提出が遅れているが、関係者と連携を図り、回答を得られるよう取り組む。 (7) 心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、JDF及び全国障害者団体定期刊行物協会連合会と連携し要望を続けてきた。引き続き、問題解決にむけて、総務省・厚生労働省・郵便事業株式会社との協議交渉に努める。 (8) 新型コロナウイルス感染症が発生して以降、国からの情報提供を加盟団体と共有することに努めるとともに、JDFと連携し、内閣総理大臣並びに厚生労働大臣に対し、障害者を取り残さない対策、情報提供と相談体制、福祉サービスの継続確保と事業等への支援、人権擁護等に対する『新型コロナウイルス感染症に関する要望(第一次)』を行った。 3. 災害時における対応について  大規模災害における被災障害者の対応については、過去の教訓を踏まえ、法改正を含めた取組を国に対し求めたことに加え、与党との意見交換等の場において、多様な障害特性を理解しニーズに沿った支援体制の促進や地域における平常時からの防災減災に向けた取組検討の場への当事者参画の体制整備等について要望を行うなど、障害当事者の意見や提案を反映した施策や個別の避難計画作成と実践を含め、地域の障害関係団体や事業者との積極的な関わり合いの有効性の発信に努めた。 4. 中央障害者社会参加推進センター事業の拡充 (1) 令和元年7月5日(金)、全社協会議室(東京都千代田区)において、「障害者110番運営事業研修会」を開催した。午前は、福祉圏域の中核を担う障害者就業・生活支援センターの積極的活用等について、「職場定着のための取り組み」と題した講演を千葉障害者就業支援キャリアセンター所長の藤尾健二氏に、午後は、テーマ別に相談事例を作成・解決までを7つのグループに分けワークショップを行った。 (2) 身体障害者相談員の研修及び交流会の場として6ブロックで開催した身体障害者相談員研修会(参加者延べ2,422人)に対し、講師派遣の調整や開催費の一部助成を行った。 ※開催状況/東北・北海道ブロック(令和元年11月14日岳温泉光雲閣、福島県)、関東甲信越静ブロック(令和元年9月3日ホテルポートプラザちば、千葉県)、中部ブロック(令和元年10月23~24日長島温泉ホテル花水木、三重県)、近畿ブロック(令和元年11月18日ビッグ・アイ、大阪府)、中国・四国ブロック(令和元年10月3日きらめきプラザ、岡山県)、九州ブロック(令和元年11月14日佐賀市文化会館、佐賀県) (3) なお、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)・中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体)合同委員会については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催を中止し、書面報告とした。 5. 障害者相談支援事業の充実 (1) 上掲の通り、個々の障害者相談員の相談活動を支援できるようスキルアップや情報交換の場の提供やブロックで開催する障害者相談員研修会への助成の実施や府省庁等へ講師の派遣依頼・調整を行う等、事業の向上に努めた。 (2) 令和2年2月13日(木)、ホテル相鉄フレッサ東京ベイ有明(東京都江東区)において身体障害者相談員全国連絡協議会理事会を開催し、今年度の事業報告・決算見込及び来年度事業計画・予算案について審議した。会議終了後、隣接施設で開催していた「シーズ・ニーズマッチング交流会2019」を見学、自立支援機器の情報収集や意見交換を行った。 (3) 身体障害者相談員全国連絡協議会の会員を対象に、「相談員会報」(令和元年度版第21号8000部、年1回)を発行し、障害関連の制度や日身連の活動の情報提供、共有に努めた。 (4) 日身連ホームページや機関紙『日身連』を通し、相談活動に役立つ情報提供にこころがけるとともに、相談員活動についての広報にも努めた。 6. 消費生活協同組合社会福祉活動等助成事業  地域における障害理解に向けた啓発促進事業として、障害者団体と地域社会の積極的な関わりの実践版として、日身連と加盟団体が協働して全国6か所で「心のバリアフリー啓発プログラム研修」を開催した。また、事業を行うにあたっては実行委員会を設置し研修内容の検討を行ったほか、実行委員には当日の進行やファシリテーター等の協力をいただいた。  ※全国6か所で開催したワークショップは以下の通り。  ・全6ブロック参加者 305人(6か所合計) ・講師養成プログラムとして、模擬シナリオによるワークショップ体験及び意見交換会、アニメ動画『心のバリアフリーについて学ぼう』(内閣官房製作)視聴 ①中部ブロック:中嶋実行委員(三重県身連事務局長) 令和元年10月24日(木)ホテル花水木コンベンションホール・三重県桑名市 ② 東北・北海道ブロック:野辺地実行委員(岩手県身協事務局長) 令和元年10月31日(木)ホテルメトロポリタン盛岡NEW WING・岩手県盛岡市 ③ 関東甲信越静ブロック:菊地実行委員(茨城県身連事務局長) 令和元年12月10日(火)オークラフロンティアホテルつくば・茨城県つくば市 ④ 近畿ブロック: 八田実行委員(京都市身連事務局長) 令和元年12月19日(木)アークホテル京都・京都府京都市 ⑤ 九州ブロック:高次実行委員(福岡市身協110番相談員) 令和元年12月20日(金)JR博多シティ・福岡県福岡市 ⑥ 中・四国ブロック:山中実行委員(広島県身連事務局) 平野実行委員(広島市身連事務局) 令和元年12月23日(月)リーガロイヤルホテル広島・広島県広島市 7. 障害及び障害者理解の啓発促進 (1) 障害者の社会参加の促進及び障害理解にむけた啓発促進事業(SDGs11-7実践事業) バリアフリーマップの作成  障害理解の促進に向けた取組の重要なカギとして、障害者団体の積極的な関わりの実践として、SCSK株式会社からの寄付金をもとにバリアフリーマップ(QRコード付)を作成し、東京メトロの協力を得て、障害者週間に駅構内にポスターを掲示し、車いす使用の方をはじめとする移動が困難な方に活用いただくとともに、移動の困難な方が日常抱えている課題の解消や配慮のあり方への気づきを目的に社会に発信した。   バリアフリーマップ掲示期間 12月2日(月)~12月8日(日)の7日間            掲示場所 東京メトロ駅構内160か所   周知広報 機関紙『日身連』に記事を掲載、ホームページでマップデータを公開 (2) 心のバリアフリーの啓発促進の観点から以下の事業を実施または協力した。 ① 障害理解啓発ワークショップ~伝える力・受け取る力を考えよう~ (内閣府障害者週間連続セミナー) 令和元年12月6日(金)有楽町朝日スクエア(東京都千代田区) 参加者34名、5グループで実施、コーディネーター阿部一彦会長 大規模災害で小学校の体育館に避難を想定しワークショップを開催 ※『心のバリアフリーについて学ぼう~メッセージ編』(内閣官房作成)視聴 ② インクルージョンフェスティバル2019in世田谷(協力) 令和元年9月1日(日)世田谷区民会館(東京都世田谷区) ワークショップへの参加協力 ※なお、令和2年3月、羽田国際線旅客ターミナルビル内ホール等で予定していた インクルージョンフェスティバル2020については新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期 (3) 障害者の社会参加と福祉機器開発等の促進の観点から、以下の事業に協力した。 シーズ・ニーズマッチング交流会2019(テクノエイド協会/厚生労働省受託事業) 日身連からブース出展協力 令和元年12月17日(火)~18日(水)大阪マーチャンダイズマート(大阪府大阪市)  協力:大阪市身体障害者団体協議会 令和2年1月14日(火)~15日(水)福岡国際会議場(福岡県福岡市)  協力:福岡市身体障害者福祉協会 令和2年2月12日(水)~13日(木)TOC有明コンベンションホール(東京都江東区)  協力:千葉市身体障害者連合会 8. 日身連の基盤強化  最重要課題である財政安定化及び組織体制強化にむけ、2つの検討委員会を中心に取組んだ。 (1) 財政基盤の強化/財政委員会3回開催  自主財源確保のため開始した機関紙『日身連』の協賛広告への協力の呼びかけや企業への広報に取り組み、一定の成果を生むことができた。今後は、財政基盤の安定化にむけ、長期的な視点からも検討を進めていく。 (2) 政策体制の強化/組織施策委員会2回開催 評議員会で継続審議となった議案(会長報酬の見直し、理事定数減の見直し、評議員定数減の見直し)について、同委員会で見直しに向けた提案の取りまとめを行った。第3回定例理事会へ委員会提案として議案提出を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により理事会が中止となったため、来年度開催される理事会に提案し承認が得られるよう努める。 9. ホームページ及び機関紙の充実  ホームページ及び機関紙『日身連』を充実させ、一層の読者獲得をめざし取り組んだ。また、会員専用ページを設け、日身連及び加盟団体間の情報共有や最新の障害者関連施策の情報提供に努めた。  機関紙『日身連』(毎月7,500部発行)については、日身連が参画した国等の会議の内容や最新情報を分かりやすく提供することに心がけた。特に、関心の高い分野や周知広報が必要とされる事柄(障害理解やバリアフリー関係、パラレルレポート等)に関しては、ホームページや機関紙3面等を活用し情報を発信した。さらに、加盟団体の活動の紹介(障害者週間の行事紹介やその他関連記事)や連携協力している団体等の活動等も取り上げる等紙面の充実を図り、賛助会員の入会促進に努めた。   10. その他の関連事業 (1) ジパング倶楽部特別会員の取扱事業 加盟団体の協力を受け、JRジパング倶楽部特別会員の新規及び更新等の受付業務を行った。消費税増税による年会費変更の周知については、会員への事前通知に加え、機関紙やホームページを通して、加盟団体含め、当該業務に支障が生じないよう周知に努めた。また、会員からの苦情や問い合わせについては、JR東日本ジパング倶楽部事務局と連携し適切な対応に努めた。 (2) 日本障害フォーラム((JDF・代表:阿部一彦)関連事業 JDFの活動に連携協力し、国内外の障害者関連の諸課題に注視し、課題解消にむけJDFの中核的存在の役割を担い取り組んだ。障害者権利条約に関する国連障害者権利委員会での国別審査にむけたパラレルレポートの準備やJDFフォーラム及び集会等の企画、準備等についても連携協力し取り組んだ。また、新型コロナウイルス感染により懸念される障害者及び障害関係事業者等に対する国や自治体の対応に関し要望活動を行った。 (3) 全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会(会長:阿部一彦)関連事業 同協議会の会長として、障害分野に関するさまざまな課題や検討事項等に関し、構成団体が連携し取り組めるよう、協議会の取りまとめ役として協議会の発展にむけ取り組んだ。