令和2(2020)年度 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告  新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「オリパラ」という。)や障害者権利条約の国別審査等、大きな行事が延期となった年となった。日本身体障害者団体連合会(以下、「日身連」という。)においても、当初予定していた事業を実施することが困難となり、結果、事業計画を見直し、オンラインを活用する等、新たな取り組みを模索しながら事業活動を行った一年となった。  府省庁の会議においても、数多くの会議がオンライン方式となるなかで、障害者権利条約を踏まえ、障害関連の施策に係る協議検討が行われた。特に、バリアフリー化の促進に関する検討の場が多く開かれ、日身連は委員として参加し、ユニバーサルデザイン2020行動計画(以下、「UD行動計画」という。)の具現化をめざし、意見具申に努めた。また、障害者差別解消法の法施行3年後を目途とする見直しが本格的に着手され、日身連は、国や政党での発言の場において内閣府政策委員会の意見書を踏まえた改正法の実現と早期施行にむけ、日本障害フォーラム(以下、「JDF」という。)等と連携し要望活動を行った。  新型コロナウイルス感染症の感染予防対策に関しては、国や民間団体からの情報について機関紙やホームページを通し加盟団体への提供共有に努めるとともに、障害特性に配慮した接遇や対策とともに、団体活動や運営の困窮な状況改善について要望を行った。  日身連の重要な課題である財政及び組織体制の安定強化については、財政の安定化に対する検討委員会(以下、「財政検討委員会」という。)並びに組織体制強化及び障害者施策等に関する検討委員会(以下、「組織・施策等検討委員会」という。)を中心に課題改善にむけ取り組んだ。状況のさらなる改善と加盟団体の組織強化や財政面の困窮に関する問題については、加盟団体と連携を密にし、課題解消をめざし、引き続き、取り組んでいく。   日身連の主な事業: 1. 「第65回日本身体障害者福祉大会ひろしま大会」  当初、6月3日(水)、4日(木)に開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、万全な感染予防対策が難しいことから広島県身体障害者団体連合会、広島市身体障害者福祉団体連合会の意向を受け、開催中止とした。永年にわたる地域の障害者福祉に寄与した日身連会長被表彰者52名の方に対し、賞状とひろしま大会実行委員会からの記念品を贈呈するとともに、機関紙「日身連」で紹介し日頃の努力と功績を称えた。 2. 国及び政党等に対する要請行動並びに審議会等への積極的参画 (1) 内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会はじめ、内閣官房、内閣府、厚生労働省、国土交通省、文部科学省、総務省、経済産業省、金融庁、警察庁等の委員会や検討会等のほか政党の会議等に参加し、意見具申に努めた。 (2) 特に、障害者差別解消法施行3年後の見直しに関しては、JDFと連携し障害者権利条約を踏まえた改正法案となるよう声明文を出す等積極的に取り組むとともに、加盟団体への情報共有にも努めた。公共交通機関及び公共施設や情報保障等に係るハード・ソフト両面におけるバリアフリー関連施策、視覚障害者等の読書環境整備等の促進等の協議・検討においては、委員として参加し意見具申に努めた。 (3) そのほか、新国立競技場ユニバーサルデザインワークショップの参加者として報告会の実施に連携・協力し、障害の多様な特性に配慮した適切な対策が講じられるよう意見や提案を行うとともに、会議の内容や施策の動向について加盟団体への情報共有に努めた。 (4) 国や民間企業等からの協力要請に関しても積極的に対応し、障害理解に係る啓発促進が図られるよう働きかけに努めた。(インタビュー/郵政民営化推進に係る課題等、アンケート/高速道路休憩施設のバリアフリー状況、災害防災、家のリフォーム、日本弁護士連合会民事裁判手続のIT化、実証実験・ヒアリング/自動運転化バス、ガイドブック・接遇教材の監修等、情報データ共有/日身連発行書籍) (5) 令和3年度予算税制等に関する要望や障害福祉サービス等に関する報酬改定に対し、与党へ要望を行った。心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、JDF等と連携して取り組んだ。 (6) これらの活動や障害者関連施策の情報が遅滞なく把握できるように、日身連ホームページ(加盟団体会員専用サイト)や機関紙「日身連」、メールを活用し、加盟団体への情報提供に努めた。 (7) 国への「日身連要望事項」については、理事会の審議を経て、正副会長会及び組織・施策等検討委員会において要望事項の取りまとめを行い、関係省庁から回答文書を得た後は、冊子にまとめ、加盟団体へ配布する。 3. 新型コロナウイルス感染対策及び災害時における対応について  新型コロナウイルス感染症に対する万全な予防対策が難しいことから第65回日本身体障害者福祉大会ひろしま大会、障害者110番事業研修会、6ブロックでの身体障害者相談員研修会等を中止したほか、理事会並びに評議員会については書面同意による決議の省略またはオンラインによる開催を行った。  新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言解除後は、加盟団体を対象にオンラインによる「団体活動における新型コロナウイルスに関するアンケート」を実施し、新型コロナウイルス感染対策に関連した要望として国や与党へ要望を行った。また、JDF及び全国社会福祉協議会とも連携し国等への要望活動に協力した。  さらに、内閣官房からの依頼により「共生社会ホストタウンサミット・オンラインミーティング withコロナ・afterコロナ時代における新しい交流のあり方」に阿部一彦会長が参加し、コロナ禍における現状の課題等について障害当事者の視点から発言を行った。  そのほか、新型コロナウイルス感染症関連情報について、機関紙「日身連」やホームページあるいはメールを活用し、加盟団体への情報提供・共有に努めた。  災害に関することとして、東日本大震災から10年を迎えるなかで、過去の教訓をいかした対策(避難誘導、避難所、仮設住宅等に関わる課題や避難訓練の在り方)が図られていないことについて、与党との意見交換の場で要望や提案等に努めるとともに、内閣府の防災推進国民会議や高齢者等の避難に関するサブワーキンググループの委員として(JDF代表の立場から)、議論に参加した。また、避難時や避難所等に関する民間企業からのヒアリング等にも協力した。 4. 中央障害者社会参加推進センター事業の拡充 (1) 6ブロックでの障害者相談員研修会並びに障害者110番事業研修会については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催中止となったことから、令和3年3月8日(月)、地方障害者社会参加推進センター、加盟団体、相談事業実務関係者等を対象に、オンラインセミナー「コロナ禍における団体の取組~新たなチャレンジ~」を開催した。セミナーでは、3名の方(沖縄県身体障害者福祉協会/仲里真哉氏、名古屋市身体障害者福祉連合会/谷川陽美氏、九州身体障害者団体連絡協議会・長崎県身体障害者福祉協会連合会/土岐達志氏)とオンラインでつなげ、コロナ禍でさまざまな工夫やICT(情報通信技術)等の新しい技術・手法を用いて、これまでとは違った事業のあり方を模索した取組を発表いただいた。最後に、厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室の村山太郎室長補佐から総括いただいた。セミナーは、見逃し配信含め、80名超の方に視聴いただいた。 (2) 令和3年3月23日(火)、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)及び中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体)合同委員会をオンラインで開催した。会議では、事業変更に伴う予算執行の内容確認やコロナ禍における障害者の社会参加等について協議を行った。 (3) そのほか、中央ならびに地方障害者社会参加推進センター事業のネットワークの強化とともに、事業の活性化を図った。 5. 障害者相談支援事業の充実 (1) ブロックでの研修事業等が実施できなかったことから、機関紙「日身連」を通し、障害者施策の動向や障害者権利条約、障害者差別解消法等に関連したさまざまな情報の提供に努めた。 (2) 令和3年3月4日(木)、身体障害者相談員全国連絡協議会理事会をオンラインで開催し、今年度の事業報告案及び決算見込、来年度の事業計画案及び予算案について審議したほか、それぞれの地域における相談員活動の現状や課題、今後の活動の展開等について意見交換を行った。 (3) 身体障害者相談員全国連絡協議会会員にむけ「相談員会報」(令和2年度版、第22号8,000部、年1回)を発行し、新型コロナウイルス感染症の予防対策や国等からの通知や相談活動に活用できる情報の提供に努めた。 (4) 「個人情報保護」(行政が収集管理)の開示にかかる問題については、障害者相談員活動の充実できる環境等に着目し、身体障害者相談員全国連絡協議会、正副会長会及び組織・施策等検討委員会と連携し、国や与党への要望に努めた。 6. 障害及び障害者理解の啓発促進 (1) 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、障害者権利条約の国別審査が延期になるなか、JDFと連携しパラレルレポートの完成に協力するとともに、その報告会(2回)の実施にむけ協力した。令和3年3月9日(火)のパラレルレポートオンライン報告会では、阿部一彦会長がJDF代表として参加、報告をおこなった。 (2) 障害者差別解消法に対する国民的理解が深まるよう、加盟団体、中央障害者社会参加推進センター、関係団体及び行政機関等と連携し事業活動に取り組んだ。 (3) 民間団体や事業者からの協力依頼についても積極的に取り組んだ ① インクルージョンフェスティバル(インクルージョン実行委員会主催)の開催にむけ協力した。(令和3年4月25日、羽田国際空港内ホールにおいてオンラインによるイベントを開催、その後、全国28空港を中心にアート展及び講演会を開催予定) ② 民間企業の依頼により、障害のある人の交通移動環境や生活環境、災害時における課題等をテーマに、実証実験や調査、ヒアリング等に協力するとともに、障害に対する理解啓発の拡充に努めた。 7. 消費生活協同組合社会福祉活動等助成事業  予定していた「障害者権利条約を踏まえた障害者分野における環境整備等に関する研修事業」については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により実施することが困難なことから事業内容を変更し、「障害者相談員活動促進事業」として、障害者相談員活動の充実のためのハンドブック「障害者相談員のための活動ハンドブック」を発行した。障害者相談員ほか、加盟団体及び関係団体、地方自治体(主管課)、図書館、行政機関等へ無償配布(5,000冊)を行った。なお、増刷の希望に応え、令和3年4月に第2版(有償)を発行し、さらに障害者相談員活動に寄与するとともに、障害者相談員及び相談活動の周知に努める。 8. 日身連の基盤強化等  最重要課題の財政の安定化と組織体制強化に関しては、2つの検討委員会/財政検討委員会、組織・施策等検討委員会を中心に協議を行う等取り組んだ。 (1) 財政基盤の強化/財政検討委員会(オンライン開催1回) 自主財源確保のため手がけた機関紙「日身連」の協賛広告について、引き続き、目標数にむけた協議や協力依頼に取り組んだ。また、令和3年度の予算編成に関する検討を行う等、日身連の財政基盤の安定化にむけ努めた。さらに長期的な観点から検討を進めていく。 (2) 政策体制の強化/組織・施策等検討委員会(オンライン開催1回、メールによる協議検討)  平成30年度第2回定時評議員会における3提案のうち、継続検討になっていた理事定数の削減(令和5年度改選期からの適用)についての取りまとめを行い、第3回定例理事会へ議題提案したほか、障害者関連施策の動向や課題解消の検討等を目的とした作業部会の設置を提案する等、日身連及び加盟団体の連携と組織体制の強化にむけ協議検討に努めた。 (3) 新型コロナウイルス感染に関する会議運営の対応   評議員会、理事会、正副会長会及び検討委員会等の開催に関しては、新たにオンラインを活用した会議の開催に取り組んだ。また、オンライン開催の実施にあたっては、役員、評議員、委員の通信環境が整うように事前調査を含め、機器の貸出、情報保障等も準備し、開催にあたった。 9. ホームページ及び機関紙の充実  ホームページ及び機関紙「日身連」(毎月7,500部発行、但し新型コロナウイルス感染症の影響により5月号は発行中止)を通し、日身連の活動状況や国等の障害者関連の施策の動向、新型コロナウイルス感染症の関連情報等について遅滞ない情報提供に努めた。そのほか、加盟団体の事業活動(障害者週間の行事やその他関連記事)等含め、日身連及び加盟団体の活動を社会に発信し、紙面の充実を図るとともに、新規読者や賛助会員等の獲得に努めた。また、新型コロナウイルス感染症に関する特集や日身連が実施したアンケート(対象/加盟団体)の調査報告を発信する等、情報共有を行った。  ホームページにおいては、日身連の活動がさらに認知されるよう情報発信に工夫するとともに、情報発信や加盟団体間相互の情報収集にも努めた。また、会員専用ページには、国の最新の動向や関心の高い事項に関する情報提供を行った。   10. その他の関連事業 (1)ジパング倶楽部特別会員の取扱事業    加盟団体の協力を得て、JRジパング倶楽部特別会員の新規及び更新の受付業務を行うとともに、支障なく利用できるように会員からの問い合わせに対し、JR東日本ジパング倶楽部事務局への連絡調整を行う等、適切な運用ができるよう対応に努めた。 (2)日本障害フォーラム(JDF・代表:阿部一彦)関連事業  JDFの活動に連携協力し、国内外の障害者関連の諸課題に取り組むとともに、JDF代表として国の会議に参画し意見具申に努めた。また、延期にはなっているが、障害者権利条約の国別審査にむけパラレルレポートの完成や関連した行事等にも積極的に協力し、JDFの中核的存在として取り組んだ。 (3)全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会(会長:阿部一彦)関連事業  障害分野に関するさまざまな課題や検討事項等に関し、構成団体が連携して取り組めるよう、協議会の取りまとめ役として会の発展に努めた。