令和5(2023)年度  社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告  漸く新型コロナウイルス感染症が感染5類に移行したが、団体の運営や事業活動への影響が残るなかで日本身体障害者団体連合会(以下「にっしんれん」という。)は、団体運営に支障をきたさないよう、加盟団体へのサポートを含め、ICTの活用を積極的に取り入れながら円滑な運営に努めた。  最重要課題の組織体制強化並びに財政問題の安定化については、正副会長会を中心に、2つの検討委員会(にっしんれん財政の安定化に対する検討委員会(以下「財政検討委員会」という。)並びににっしんれん組織体制強化及び障害者施策等に関する検討委員会(以下「組織・施策検討委員会」という。))において取り組んだ。また、加盟団体から日本身体障害者福祉大会の開催に係る負担是正に関する要望を受け、検討委員会(日本身体障害者福祉大会のありかた検討委員会(以下「大会ありかた検討委員会」という。)を設置し、加盟団体の意向や提案を反映した提案書を取りまとめた。今後、よりよい大会運営が実現できるよう取り組んでいく。  本年1月に発生した能登半島地震の被災地加盟団体の支援については、被害状況の情報収集や支援金の呼びかけを行った。また、被災障害者や施設関係者への支援が円滑に行えるよう、日本障害フォーラム(以下「JDF」という。)の活動の後押しに努めた。  そして、国連障害者権利委員会の総括所見の重要性を踏まえ、国の動向に注視し、JDFと連携して障害者施策の一層の推進にむけ意見提言等に努めた。また、令和6年4月に施行となる改正障害者差別解消法に関し、加盟団体への情報提供に努めるとともに、民間企業に向け障害理解が一層深まるようヒアリング等に積極的に取り組んだ。 にっしんれんの主な事業: 1. 第68回日本身体障害者福祉大会わかやま大会 新型コロナウイルス感染症の影響により通常開催とはせず、6月16日から同月22日の間、オンラインによる録画配信にて開催した。第1部では、野村しげき氏(弁護士、日本弁護士連合会障害者の権利に関する条約パラレルレポート作成プロジェクトチーム座長)から「障害者差別解消法を考える」をテーマに講演をいただいた。第2部では、式典と議事を行い、にっしんれん会長被表彰者52名のかたを写真とともに紹介した。議事では、大会決議、大会宣言のほか、令和4年度事業報告及び令和5年度事業計画の報告が行われた。 2.国及び政党等に対する要請行動並びに審議会等への積極的参画 かっこ1 内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会をはじめ、内閣府、厚生労働省、国土交通省、文部科学省、経済産業省、金融庁等の委員会や検討会等のほか、政党や事業者のヒアリング等 2ページ に参加し、意見具申に努めた。 かっこ2 国への「にっしんれん要望事項」については、障害理解への周知促進を含め、地域からの声として関係省庁へ文書回答を求め提出した。回答は冊子に取りまとめ加盟団体へ配布する。 かっこ3 障害者権利条約を踏まえた障害者施策の促進と障害当事者参画の仕組みが地域においても着実に実行されるよう、国や政党等への提言に努めた。 かっこ4 国や民間企業等からのヒアリング要請等に関し、積極的に対応し、環境整備や障害理解に係る啓発・促進が図られるよう努めた。 ・アンケート:災害時の報道呼びかけに関するアンケート(NHK) ・ヒアリング:障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針改定に係る府省庁合同ヒアリング(中央府省庁)、障害者差別解消法に係る意見交換会(国交省)、障害者の情報アクセシビリティにおけるヒアリング(総務省)、人権擁護・障害理解に関するヒアリング(東京法務局)、障害福祉サービス等報酬改定団体ヒアリング(こうろう省)、改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会ワーキンググループ意見聴取(こうろう省)、民事訴訟手続きのIT化にかかるヒアリング(法務省)、住宅設計ガイドラインヒアリング(国交省)、住宅設計バリアフリーガイドライン検討に向けた車椅子使用者に対するヒアリング(国交省)、EV充電施設等に関するヒアリング(国交省・経産省)、情報アクセシビリティ好事例に関するヒアリング(野村総合研究所/総務省関係)、障害者の金融サービスの利便性向上に向けた取組状況に関する意見交換会(金融庁)  ・その他:  人権教室(東京法務局)、ニーズ・シーズマッチング交流会大阪・東京(テクノエイド協会/こうろう省関係)、住宅設計バリアフリーガイドライン検討に向けた検証(国交省) かっこ5 令和6年度予算税制や障害福祉サービス等に関し、与党へ要望を行った。心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け協議が滞っている状況だが、JDF及び障害者団体定期かんこうぶつ協会と連携し、課題解決に向けて取り組んでいく。 かっこ6 にっしんれん及び加盟団体の活動や障害者関連施策の情報が遅滞なく把握できるように、にっしんれんホームページ(加盟団体会員専用サイト)や機関紙『にっしんれん』、メール等を活用し情報提供に努めた。 3.新型コロナウイルス感染症対策及び災害時における対応について かっこ1 令和5年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したが、現状に鑑み、オンラインを活用あるいは併用する形で全国大会や理事会、評議員会、研修会等を開催した。 まる1、第68回日本身体障害者福祉大会わかやま大会については、録画配信にて開催。 まる2、ブロックにおける身体障害者相談員研修会については、6ブロック(東北・ 3ページ 北海道/山形県山形市、関東甲信越せい/群馬県オンライン配信、中部/岐阜県大垣市、近畿/京都府京都市、中・四国/愛媛県松山市、九州/大分県大分市)で対面またはオンラインにて開催した。 まる3 障害者の権利擁護を目的とする障害者110番研修会については、障害者110番事業従事者等相談実務経験者等を対象に、令和5年12月20日、APとうきょう丸の内(東京都千代田区)を会場にオンライン併用で開催した。 かっこ2 理事会、評議員会、正副会長会、検討委員会についてはオンラインにより開催した。 かっこ3 災害に関することとしては、東日本大震災等の過去の教訓をいかした対策(避難誘導、避難所、仮設住宅等に関わる課題や避難訓練の在り方)が推進されるよう、引き続き、与党との意見交換の場で要望や提案に努めたほか、内閣府の防災推進国民会議に参加(JDF代表の立場から)し提言に努めた。また、令和6年1月1日に発生した能登半島地震による被災者支援対策等に関しては、にっしんれん内に能登半島地震対策本部を設置し、支援金の募金を行うとともに、JDFと連携し、要望活動や内閣府との意見交換に努めた。 4.中央障害者社会参加推進センター事業の充実 かっこ1 共生社会に向けた障害理解の促進を目的に政策協議事業として、加盟団体関係者、都道府県障害者社会参加推進センター運営団体及び障害関係団体関係者、障害当事者等を対象に、講演研修を行った。   まる1、令和5年6月16日〜22日(動画配信)    ・講演「障害者差別解消法を考える」     講師 野村しげき氏(弁護士、日本弁護士連合会障害者の権利に関する条約パラレルレポート作成プロジェクトチーム座長) かっこ2 障害者の権利擁護を目的に、障害者110番事業従事者等相談実務経験者等を対象に、障害者110番研修会をオンライン併用で対面開催した。 まる1、令和5年12月20日 APとうきょう丸の内(東京都千代田区)参加者70名(会場17名、オンライン53名) ・講演「山形県における県及び市町村の差別解消条例制定の取組み」 講師 安部まこと氏(社会福祉法人山形県身体障害者福祉協会会長) ・講演「改正障害者差別解消法の施行に向けた課題と展望について」 講師 田中伸明氏(弁護士、JDF政策委員会委員長) かっこ3 令和6年3月14日、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)及び中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体)合同委員会をオンラインで開催し、厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室のかわべしょういち室長に出席いただいた。会議では、令和5年度における中央障害者社会参加推進センター事業の運営状況の報告や令和6年度事業計画案を協議したほか、各団体における障害者の社会参加に資する取組状況等について意見交換を行った。 4ページ かっこ4 新型コロナウイルス感染症の影響が残るなかだったが、地域の障害者相談員の相談活動の強化に資するため、6ブロックの障害者相談員研修会に対し開催助成を行った。 まる1、東北・北海道ブロック 令和5年11月10日(参加103名) 山形国際ホテル(山形県山形市) ・基調講演1「補装具費支給制度等について」 講師 徳井あかね 厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室福祉用具専門官 ・基調講演2「福祉との連携による障がいしゃの消費者トラブルの防止に向けて」 講師 鈴木朗子 山形県消費生活センター消費生活相談員 ・意見交換「地域の障がいしゃの生活課題の現状について」     進行 阿部かず彦 日本身体障害者団体連合会会長 まる2、関東甲信越せいブロック 令和5年9月27日(参加254名)  群馬県社会福祉総合センター(群馬県高崎市、オンライン配信 ・講演「補装具費支給制度等の動向について」     講師 田中匡 厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室福祉用具支給調査官・障害者支援機器係長 まる3、中部ブロック 令和5年11月8日〜9日(参加105名)  大垣フォーラムホテル(岐阜県大垣市) ・講演「孤独・孤立対策について」 講師 ふるいなおたか 内閣官房孤独・孤立対策担当室主査 ・こうえん「しょうがいしゃ差別解消法改正」     講師 北島つとむ 岐阜県障害しゃ差別解消支援センター長        今村留美、 岐阜県障害しゃ差別解消支援センター広域専門相談員 まる4、近畿ブロック 令和5年10月16日(参加532名)  京都テルサ(京都府京都市) ・基調講演「補装具費支給制度等について」 講師 徳井あかね 厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室福祉用具専門官 まる5、中国・四国ブロック 令和5年10月5日(111名)  愛媛県県民文化会館(愛媛県松山市) ・講演「その時、障害しゃは何を思うのか?」 講師 高橋信行 えひめ盲ろうしゃ友の会理事長 ・事例発表「行政のパイプ役としての相談員活動」 発表者 川ア健二 ・事例発表「出会い系サイトをめぐる金銭トラブル」     発表者 おち義則 まる6、九州ブロック 令和5年11月30日から12月1日(参加493名)  ホルトホール大分(大分県大分市) 5ページ ・講演「障害者差別解消法の理解と障害者相談員の資質について」 こうし 滝口まこと、 大分大学福祉健康科学部准教授 ・研究部会1「情報化社会のもと障害者差別解消法の理解・啓発について」 ・研究部会2「障害者相談員資質の向上と活動活性化について」 5.障害者相談員活動の充実 かっこ1 令和6年2月28日、令和5年度身体障害者相談員全国連絡協議会理事会をオンラインにて開催し、令和5年度決算見込み関係及び令和6年度予算案の協議を行った。また、協議会における事業運営に関する課題検討、コロナ禍での研修事業運営や地域の取組等について意見交換を行い、協議会相互の連携強化に努めた。障害者相談員の周知広報の強化や高齢化の問題、個人情報保護条例による相談活動の弊害等に関する課題等について話し合うとともに、来年度に向け、相談活動の好事例の情報共有に取組むことが確認された。 かっこ2 身体障害者相談員全国連絡協議会会員に向け『相談員会報』(令和5年度版、第25号8,000部、年1回)を発行し、協議会理事会の報告のほか、相談活動に役立つ情報やにっしんれんの活動等の情報提供を行った。また併せて、改正障害者差別解消法の運用に向けた動きや障害者権利条約総括所見に関わる障害者施策の現状等に関する情報提供に努めた。 かっこ3  令和2年度出版した「障害者相談員のための活動ハンドブック」のほか、「障害者権利条約総括所見のポイント解説」(出版JDF)が広く活用されるように機関紙やホームページを通して周知広報に努めた。 6.障害及び障害者理解の啓発促進 かっこ1 障害者権利条約総括所見の理解促進を図るため、JDFと協力し解説ぼんの作成に取り組んだ。 かっこ2 改正障害者差別解消法の理解促進とともに、心のバリアフリーへの啓発促進のため、民間団体や企業からのヒアリング協力等、多方面にわたり取り組んだ。また、加盟団体に向けた国等の情報共有に努め、地域へ障害理解がさらに拡がるよう加盟団体等と連携協力し情報共有に努めた。 かっこ3 民間団体や事業者からの協力依頼についても積極的に取り組んだ。 まる1、駅や空港施設内等を会場とするインクルージョンフェスティバルの開催に協力した。(全国19か所駅、空港) まる2、日弁連、TOTO、NHK、野村総合研究所等の依頼により障害理解の促進やバリアフリーの環境整備等に関するヒアリング等に協力し、一層の障害理解の促進に努めた。 7.障害者の社会参加促進に向けた障害者団体の活動調査事業(消費生活協同組合社会福祉活動等助成事業) にっしんれんのネットワークを活用し、都道府県政令市加盟団体を対象に、障害者の 6ページ 社会参加を目的とする事業について調査を行い、結果を取りまとめた。報告書は加盟団体及び関係団体、行政機関等に無償配布した。また、ホームページを活用し、地域の取組を事例として情報発信し、地域における活動の周知に努めた。 8.にっしんれんの基盤強化等 最重要課題の財政の安定化と組織体制強化に関しては、2つの検討委員会(財政検討委員会、組織・施策等検討委員会)を中心に協議を行い取り組んだ。また、日本身体障害者福祉大会のあり方について、新たに検討委員会を設置し協議を行った。 かっこ1 財政基盤の強化/財政検討委員会(オンライン開催1回) 令和6年度予算案に関する協議を行った。 かっこ2 政策体制の強化/組織・施策等検討委員会(オンライン開催1回) にっしんれん要望事項の精査や作業部会の準備等について協議したほか、国や民間企業等とのヒアリング等への協力について意見交換を行った。 かっこ3 日本身体障害者福祉大会検討/大会あり方検討委員会(オンライン開催4回) 全国大会の開催において、対面で開催していた従来の規模を維持して大会を実施することが開催地の加盟団体にとって大きな負担となっていることが問題提起されたことをうけ、令和5年11月15日に各ブロックからの推薦者を委員とした第1回検討委員会を開催し、令和6年2月29日まで4回にわたり協議検討を行った。検討委員会での協議の結果、各ブロックからの意向や提案等を踏まえ、大会会場の規模や参加人数の縮小等に関する提案書を取りまとめ、令和6年3月13日の第3回定例理事会で承認を得た。また、同年3月27日の第2回定時評議員会において当該提案書の報告を行った。今後は提案書を踏まえて、開催地の加盟団体と連携協力して大会実施を進めていくこととした。 かっこ4、 新型コロナウイルス感染症の感染防止に関する会議運営の対応 令和5年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行となったが、経費削減を含め、評議員会、理事会、正副会長会及び検討委員会等会議の開催については、オンラインを活用した開催方法とした。オンライン開催の実施にあたっては、参加者の通信環境や情報保障等にも配慮し、支障が生じないよう取組に努めた。 9.ホームページ及び機関紙の充実 機関紙『にっしんれん』(毎月7,200部発行)を活用し、にっしんれんの事業や出版等の活動はじめ、国等の障害者関連の施策の動向、新型コロナウイルス感染症の関連情報等について、遅滞がないよう情報の発信に努めた。また、加盟団体の事業活動(障害者週間の行事やその他関連記事)等含め、にっしんれんの活動を広く周知されるよう努めた。そのほか、加盟団体での社会貢献に係る活動等の周知等の紙面の充実を図り、新規購読者や賛助会員等の獲得に努めた。 ホームページについては、令和5年8月にリニューアルを行い、にっしんれんの活動を広く周知するとともに、障害分野の動向や社会の動きを遅滞なく情報提供すること 7ページ に努めた。また、加盟団体における事業活動の紹介等にも取り組み、閲覧者の獲得に向けて取り組んだ。 10.その他の関連事業 かっこ1、 ジパング倶楽部特別会員の取扱事業 加盟団体の協力を得て、JRジパング倶楽部特別会員の新規及び更新の受付業務を行うとともに、円滑に利用できるように会員からの問い合わせ等に対して、JR東日本ジパング倶楽部事務局への連絡調整を行う等、適切な運用に努めた。なお、今年度の取扱い件数は10,195件となった。 かっこ2 JDF関連事業(代表:阿部かずひこ にっしんれん会長) 構成団体の一つとして、連携協力し、国内外の障害者関連の諸課題に取り組んだ。また、阿部かずひこ会長は、JDF代表として国の会議に参画し意見具申に努める等、JDFの中核的存在としての責務に努めた。また、障害者権利条約総括所見の実現をめざし、国への働きかけに努めた。 能登半島地震の支援対策については、国への要望活動のほか、被災地に赴き、被災地の障害者団体等との意見交換にも努めた。 かっこ3 全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会関連事業(会長:阿部かずひこにっしんれん会長) 障害分野に関するさまざまな課題や検討事項等に関し、構成団体が連携して取り組めるよう、協議会の取りまとめ役として会の発展に努めた。