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ヒアリング控え統合問題を協議
 ~日身連臨時理事会報告
2004/06/15
  日身連では6月11日、介護保険制度の支援費制度への統合問題について話し合うことを主要議題とする臨時理事会を開催しました。
 今回の臨時理事会は、6月18日に厚生労働省主管・社会保障審議会障害者部会が日身連や日盲連などの中央障害者8団体から統合問題に関するヒアリングを実施すること、同部会として6月中に統合問題についての一定の方向性を出す方針であることを受け、開催したものです。
 会議では、介護制度問題に関する内部検討委員会(前田保委員長)から出された中間答申(下記参照)について、委員長報告などのあと審議をおこない、この中間答申を了承。
 5月26日に採択された第49回日本身体障害者福祉大会での緊急決議に基づき、「現状の介護保険制度に支援費制度を統合することで生じる恐れのある生活基盤と福祉の後退は認めない」との方針を確認しました。
 その一方で、社会保障審議会障害者部会のヒアリングでは、地域間格差の解消や障害者ケアマネジメント体制整備といった、速やかに解決すべき重要課題への具体的な要望をおこなうとともに、自立と人権が保障された中・長期的な総合的地域支援施策の確立に向けた政策提言をめざす方向性を確認しました。また、日身連として今後も粘り強く国と協議を継続していく方針を固めています。


                   介護制度問題にかかる内部検討委員会 中間答申

                                   平成16年6月8日
社会福祉法人
日本身体障害者団体連合会
 会 長  兒 玉  明 殿

                                委 員 長  前 田  保


 日身連においては、障害者一人ひとりが地域のなかで豊かで安心した暮らしをおくることができるノーマライゼーションを実現するという観点に立って、支援費制度と介護保険制度の統合問題についてどう考えるか、検討してきたところである。
 今後の状況を見ながら引き続き検討を加えていく必要があるが、当該問題にかかる現時点での当委員会としての基本的な立場は下記のとおりである。

Ⅰ 統合問題の背景

 1.支援費制度の視点
平成15年4月、支援費制度が「措置制度」から「契約制度」として施行された。平成15年度はサービスの利用が予想を超えて、大きく伸び、その結果、国では財源不足が表面化し、地方自治体でも追加的な予算措置が必要になった。国ではホームヘルプサービスについて対前年度比で実質3割増の予算を組んでいたが、実際には6割を超えて増加するなど、大幅な財源不足が生じた。この危機は厚生労働省、国会議員並びに関係機関及び障害者団体の努力により、乗り切ることができたが、根本的な問題はそのまま残り、平成16年度も厳しい状況にある。
支援費制度自体の視点から考えても、基本的解決策を設計しないと、将来の安全、豊かな自立と地域生活の保障が危惧されている。また、支援費制度は身体障害者と知的障害者のみの制度であり、精神障害者等は別のサービスとなっているという課題も含んだまま創設されている。

 2.介護保険制度の視点
介護保険制度は、福祉分野で初めて「措置制度」を見直し、「利用契約」に改め、「自立支援」「国民の共同連帯」などの精神に基づく社会保険方式の制度として、平成12年度から実施された。財政的には保険料と税財源とによって賄われる安定した制度である。5年目を迎える現在においても、全体としては、円滑な運営状況を示している。また心配された地域間格差も縮小されてきている。しかし、介護保険制度については、制度創設時から障害者サービスとの関係をどうするかが課題(宿題)となっていた。そして、当制度を抜本的に見直す5年目を迎える現在、両者の統合が具体的に議論され始めた。問題の一つは、「介護」だけでは障害者の幅広い生活支援ニーズを満たすことができないという点である。
介護保険制度の見直しに関する付則(平成8年11月29日 介護保険法案、閣議決定)「第2条 介護保険制度については、・・・障害者の福祉に係る施策・・・被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲を含め・・・検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講じられるべきもの。」介護保険制度の見直しが課題とされていた。

 3.三位一体改革の視点
  支援費制度を議論していた平成12年頃にはなく、昨年から出現した新たな財政構造改革の動きであり、地方分権を進めるため、国の補助・負担金を政府全体で今後2~3年で総額3兆円削減し、権限と財源を地方自治体に移すことである。
障害者サービスは現在、市町村や都道府県によって地域格差がある現在、「一般財源化」されることは市町村の財政力、障害者福祉をはじめ、福祉全般に対する考え方で、その地域の障害者福祉の水準が決まることになり、地域格差は固定化するか、拡大する恐れさえある。また、市長会や知事会は、障害者福祉をはじめ、福祉の補助金や負担金を無くして「一般財源化」することを提案しており、このままでは市長会や知事会の提案どおりになる危険性が非常に高い状況にあり、危機感をもって対応しなければならない。

 4.各種審議会の答申等の視点
・平成8年6月10日、老人保健福祉審議会(介護保険制度案大綱答申)
・平成8年6月10日、身体障害者福祉審議会(意見具申)
 「障害者施策に相応しい介護サービスとその財政方式の在り方を模索していく。」

Ⅱ 日身連の障害者施策に対する基本的考え方

 1.障害者運動の歴史で培われた理念・方針・施策の展開
  日身連は次のような理念や方針に基づき、施策の展開に全力を挙げてきた。
  「自立と社会参加」・「施設支援から地域生活支援へ」
  「ノーマライゼーション」・「完全参加と平等」
  「エンパワーメント」
  「ユニバーサル化」
  [ICF]
  「インクルージョン」
  「心のバリアフリーなど」
  「欠格条項」
  「障害者差別禁止法」・「障害者権利条約の制定」など

 2.ライフステージに基づく総合的施策の展開
  日身連はこれまでの成果を踏まえ、さらに障害者施策の充実に向けて次のような施策の実現に引き続き取り組んでいく。
  (1)改正障害者基本法に基づく施策の早期具現化
  (2)扶養義務制度の撤廃
  (3)所得保障
  (4)住宅保障
  (5)雇用・就労施策 - 小規模作業所・通所授産施設の法的位置づけも含む。
  (6)パーソナルアシスタント制度導入に向けた地域生活の在り方の検討
  (7)ハード・ソフト面にわたるバリアフリー施策の充実 等

 3.将来に向かって確立に施策を実現する
 (1)自立と共生社会の確立・社会連帯観(国民の理解と共感)に基づく安定した施策の展開
 (2)将来・安全、安定したサービスの展開
 (3)将来にわたる健全財政に基づく施策の展開

Ⅲ 日身連の統合に対する見解

 1.現在までの取り組み
 (1)理事会
 (2)検討委員会開催(平成16年4月24日~)
 (3)基本方針(平成16年5月26日、第49回全国大会緊急決議)
 (4)社会保障審議会障害者部会中間報告原案「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために ~支援費制度と介護保険制度をめぐる論点の整理と対応の方向性」(高橋清久臨時委員ら3委員提出)についての検討

 2.日身連の見解

私たち日身連は、わが国を代表する障害者団体として障害者の自立と社会参加を求めて長年にわたり活動を行い、関係者の理解と協力を得ながら、ノーマライゼーションの実現に向けて前進してきた。
とりわけ「完全参加と平等」を謳った1981年の国際障害者年を契機として、障害者がその障害の種類や程度にかかわらず、地域で当たり前に暮らす「地域生活支援」の実現を、中心的な課題として取り組み進めてきたところである。
この方針は、いかなる社会経済状況であろうとも、変わらず堅持されなければならない。そして、理想を高く掲げると同時に、社会の一員として多くの国民の理解と共感を得る努力と、障害者が将来にわたって安心して地域での生活が送れるよう現実的な取り組みが必要であると考える。
現在、支援費制度の介護保険制度への統合問題が論議されているが、先に述べたような障害者を取り巻く現状を考えた場合、地域生活支援を進める観点からは、障害者福祉サービスの提供について、平成16年6月4日に社会保障審議会・障害者部会の3臨時委員名で提示された「中間報告原案」にある、介護保険制度を活用する新しい障害者施策体系の案は、現実的な選択肢のひとつであるとも考えられる。
しかしながら、この場合において日身連としては、平成16年5月26日に開催した第49回日本身体障害者福祉大会で採択した緊急決議(別紙1)の基本方針が示すとおり、現行の支援費制度による障害者一人ひとりのサービス水準については、高めることがあっても、低下させることは認められない。また、「中間報告原案」が示すとおり、統合には解決されなければならない多くの課題がある。今後、日身連とこの課題の解決のための新たな協議をしていくことを、国をはじめとする関係機関に対して強く要請する必要がある。
また、日身連としても地域社会に対して、障害者の地域生活支援とすべての市民が安心して生活できる地域社会の構築について、一層の理解と協力が得られるよう、引き続き力強くかつ粘り強く働きかけていくことを提案する。



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