平成29年11月14日 自由民主党 政務調査会 障害児者問題調査会長 衛藤 晟一 様 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 会 長 阿部 一彦 平成30年度障害福祉サービスの報酬改定に関する日身連の要望 日頃は、障害者施策の向上のため特段のご高配を賜り深く感謝申し上げます。 平成30年 4月に障害福祉サービスの報酬改定が予定されておりますが、共生社会の実現と障害者の生活の質の向上のためにも、今般の報酬改定においては、前回の改定率を下まわらない水準を確保し、改定の結果が障害福祉サービスの基盤低下と地域の障害者の暮らしの継続に支障を生じさせないものとなりますよう、特段のご配慮をいただけますようお願い申し上げます。 なお、当該報酬改定に関し、本年 7月31日、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」におけるヒアリング提出資料を添付いたします。 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第6回(H29.7.31)ヒアリング資料3 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 会長阿部一彦 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会の概要 1.設立年月日:昭和33年6月23日 2.活動目的及び主な活動内容: 全国63都道府県・政令指定都市の身体障害を中心とする当事者団体と中央の障害種別団体(公益社団法人日本オストミー協会、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)の65団体で構成。障害者の立場から、人権の保障、社会参加の促進、すべての人の社会“SocietyforAll”の実現をめざし活動している。障害の種別や有無にとらわれず、全国組織のネットワークをいかし、国や政党等への要望や政策提言など幅広い活動を行っています。 全社協障害関係団体連絡協議会や日本障害フォーラム(JDF)の構成メンバーとしても活動している。 【主な活動内容】 ・日本身体障害者福祉大会の開催 ・中央障害者社会参加推進センター事業 ・障害者相談支援事業及び障害者相談員活動強化 ・障害福祉の向上を目的とした政策提言及び要望活動 ・障害理解促進事業 ・バリアフリー促進のための事業 ・出版活動(相談員活動事例集、相談員マニュアル等) ・機関紙の発行 3.加盟団体数(又は支部数等):65団体(平成29年5月時点) 4.会員数:約1400団体(加盟団体及び関係市区町村支部)(平成29年5月時点) 5.法人代表:会長阿部一彦 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(概要) 視点1より高いサービスを提供していく上での課題及び対処方策・評価方法 (1)福祉・介護職員処遇改善加算の継続について 福祉・介護人材の確保が困難な状況を解決するためには、労働環境の改善や職員の資質の向上につながる福祉介護職員処遇改善加算の継続を行う必要がある。 (2)居宅介護、同行援護及び行動援護における特定事業所加算の継続について 在宅生活の充実を図るには、居宅介護、同行援護及び行動援護におけるサービスの質の向上を維持する必要があり、そのために特定事業所加算の継続が求められる。 (3)食事提供体制加算の適用期限の延長等について 通所サービスを利用する低所得者の食費負担を軽減し、利用者の栄養補給、健康維持のために、食事提供体制加算を延長していただきたい。 視点2地域において、利用者が個々のニーズに応じたサービスの提供を受けられるようにするための、サービス提供体制の確保に向けた課題及び対処方策 (1)重度障害者が利用できるグループホームの運営を可能にするための基礎報酬と加算の拡充について 重度障害者が利用できるグループホームを運営するための報酬の基礎単価及び夜間支援等体制加算、重度障害者支援加算の拡充をしていただきたい。 (2)グループホームの設置運営方法の違いにもとづく報酬単価について 設置運営方法の違いによって長期的な経済的負担が求められる場合があるので、その解消を図り、グループホーム設置を動機づけるために、グループホームの設置運営方法によって報酬単価に差を設けてほしい。 (3)訪問系サービスにかかる国庫負担基準について 障害が重度であっても地域で生活することを望む障害者が多く、地域移行は障害者施策の大きな柱である。そこで重度障害者の地域での生活の実現を妨げることがないように、訪問系サービスにかかる国庫負担基準に関して検討していただきたい。 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(詳細版) 視点1より高いサービスを提供していく上での課題及び対処方策・評価方法 【意見・提案を行う背景、論拠】 (1)福祉・介護職員処遇改善加算の継続について 現在、社会福祉領域では福祉・介護人材の確保に困難があることが指摘されている。福祉・介護職員の社会的地域を向上させ、人材不足を解決するためにも働き甲斐のある職場環境を整備し、意欲的に仕事に取り組むことが当たり前に行われるようにする必要がある。 福祉・介護職員処遇改善加算は要件を満たした事業所が受けられる加算であり、要件の中には労働環境の改善や昇格基準の整備・研修の機会の確保など、職員の資質や意欲の向上につながり、質の高い支援者を確保するために必要な加算であるため、現在の水準の加算継続もしくは上位の加算の創設が望ましい。 (2)居宅介護、同行援護及び行動援護における特定事業所加算の継続について 地域で生きがいを持って生活するためには居宅介護、同行援護及び行動援護は重要であり、これらのサービスの向上を維持する必要がある。そこで、これらのサービスを提供する事業所に対する特定事業所加算を継続していただきたい。特定事業所加算は要件を満たした事業所が受けられる加算であり、要件の中には有資格者の配置や職員の資質向上機会の創出など、質の高いサービスを提供していることが前提となっている加算であるため、サービスの質を維持するために必要な加算である。特定事業所加算を継続することで質を維持するとともに、安定した経営が維持されるために必要な加算である。 (3)食事提供体制加算の適用期限の延長等について 生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型及び就労継続支援B型そして障害児通所支援では、低所得の利用者の食費負担が原材料費相当のみとなるように配慮されて平成30年3月31日まで延長されている。低所得の通所サービス利用者にとっての食事は、栄養補給、健康維持のためにも重要であることをふまえ、この適用期限をさらに延長していただきたい。 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(詳細版) 視点2地域において、利用者が個々のニーズに応じたサービスの提供を受けられるようにするための、サービス提供体制の確保に向けた課題及び対処方策 (1)重度障害者が利用できるグループホームの運営を可能にするための基礎報酬と加算の拡充について 重度障害者の地域生活を実現するためには重度障害者に対応したグループホームの設置が必要だが、大幅に不足している状況にある。そこで、重度障害者が利用できるグループホームを運営するための報酬の基礎単価及び夜間支援等体制加算、重度障害者支援加算の拡充をしていただきたい。グループホームの設置が進まない理由として、グループホームの報酬だけでは経営が厳しい状況がある。特に重度障害者が多く利用しているグループホームでは、事業経営が非常に厳しく、他事業から資金を調達したり、職員を派遣するなどしてやりくりをしなければならない状況である。また、現状において夜勤職員を配置しているグループホームは少ないが、その理由として加算をとっても採算が合わないことが考えられる。重度障害者の住まいの場としてグループホームの設置を推進するためには、基礎報酬と併せて加算の拡充が必要である。 (2)グループホームの設置運営方法の違いにもとづく報酬単価について 重度の障害があっても地域で生活することを実現するためにはグループホームが求められており、経済力の大小にかかわらず、各法人はその設置に責務を感じている。土地所有や自己資金がなくてもグループホームが開設できる方法として、サブリース方式(建て貸し)は有効であるが、自前で設置する場合に比べると建設補助金がなく、長期的に見ると負担額が大きくなる。グループホームの必要性が強く望まれている現状を踏まえ、各法人がグループホームを設置しやすくなるように設置運営方式の違いによって報酬単価に差を設けてほしい。 (3)訪問系サービスにかかる国庫負担基準について 障害が重度であっても地域で生活することを望む障害者が多く、入所施設などからの地域移行は障害者施策の大きな柱である。重度障害者が地域で生活するためには必要量の訪問系サービスを確保する必要がある。しかし、訪問系サービスには国庫負担基準が設定されており、必要量のサービスを提供する場合に当該市町村の経済的負担が大きくなる場合があり、そのこともあって、サービス提供量に関して市町村間において格差が生じてしまう。 訪問系サービスにかかる国庫負担基準は、「個人のサービスの上限ではなく、市町村に対する国庫負担の上限である」とされているが、地域移行をふまえて重度障害者の地域生活の実現にどの市町村でも取り組むことができるようにすべきである。このようなことに留意して国庫負担基準の見直しがなされてきていることは承知しているが、市町村の経済力の違いによってそこに暮らす重度障害者の生活に格差が生じることがないように、今回の報酬改定に際しても訪問系サービスにかかる国庫負担基準について検討していただきたい。