令和2年11月19日 自由民主党政務調査会 障害児者問題調査会会長 衛藤晟一 様 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 会長 阿部一彦 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に対する要望について  日々、障害福祉施策の促進にご尽力頂いていることに深く感謝申し上げます。来年度の報酬改定にむけ、 以下事項を要望いたします。何卒、よろしくお願い申し上げます。 1. 生活介護におけるサービスの評価について  多くの事業所において慢性的なヘルパー不足から入浴等のサービス提供ができないことが発生しており重度障害者のQOL低下を防ぐ改善対策が重要であり、生活介護事業所の入浴サービスの加算による評価を導入し、サービス促進や機械浴槽等の設置投資につながる仕組を作ることが必要。 2. 医療的ケアを伴う重症心身障害者の生活介護の受入促進について  医療的ケアを伴う重症心身障害者が年々増加傾向にあるなか、日中活動の受け皿である生活介護事業所での受入は一部の事業所にとどまっている。現行の2段階方式の常勤看護職員等配置加算を配置人数による3~4段階方式に拡充し、積極的な受け皿の仕組を整えることが必要。 3. 福祉専門職加算について  例えば、中途障害(脳血管障害、高次脳機能障害、精神障害等)で就労継続B型を利用する際、医療的なリスクの視点や作業する上で必要な自助具の提案、作業分析等の専門的視点が必要となる。新型コロナウイルス感染症対策に関しても医療現場の感染症対策の経験は有益と考える。現行の加算対象に作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師等の専門職の活用を進めることが必要。 4. 食事提供体制加算の継続について  利用者の健康を維持し安定・安心した生活を支える上で栄養バランスのとれた食事の質の低下や利用者負担が生じないため、食事提供加算の継続が必要。 5. 送迎加算の継続について  自力での通所が困難であったり、公共交通機関が充実していない地域に在住する障害者にとり送迎サービスは不可欠であることから送迎範囲を含め送迎加算の継続が必要。   6. 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算について  身近な地域で福祉サービスの利用につなげる観点から施設利用者全体の割合(視覚や聴覚に特化した施設でないと加算対象とならない)ではなく、視覚、聴覚障害者個人に対する加算方式への見直しが必要。 7. 居宅サービス事業(主に同行援護)の加算について  悪天候による危険等から当日キャンセルするケースが少なくなく、事業所運営確保の観点からもサービスが利用されなかった対応策として欠席時対応加算のような制度を設ける等、居宅サービス事業(主に同行援護)の加算の検討も必要。 8. 口腔衛生管理体制加算の導入について  口腔ケアは様々な病気の予防にもつながることからも大変重要であり、障害の状況や特性に応じて適切に口腔健康の管理が行えるよう、現在、障害保健サービス等の報酬に含まれていない口腔衛生管理体制加算の導入の検討が必要。 9. 就労継続支援B型事業の報酬単価の見直しについて  現行の基本報酬は平均工賃額に応じた算定であり、工賃が高い利用者が優先され重度障害者や短時間作業を望む障害者の利用を困難にしている現状が見受けられる。障害特性に応じた就労支援と生活支援を一体的に行うことにより就労の意欲維持や生活の質の向上に努めているが、現行の報酬単価では評価されていない。  例えば、利用者がアビリンピックや全国障害者スポーツ大会等の出場により事業所を利用しない場合、減収につながり事業所の支援を後退させることになりかねない。また、障害によっては、日々の状態により作業につくことができず職員が1時間~2時間話し相手になったり支援をしたりする現状がある。こうした数字に表せない支援として多様な障害者の就労に取り組んでいる事業所や生活支援を積極的に実施している事業所に対し、制度面からも評価が行えるよう加算や報酬評価の見直しの検討が必要。 10. ヘルパー確保に係る報酬単価の引き上げについて  重度障害者にとり個々のニーズに応じたサービスが提供される上でヘルパーの確保は重要であり、訪問系の重度訪問介護や家事援助、居住系の夜間支援等体制加算や夜間職員配置等体制加算の報酬引上げが必要。 11. 障害支援区分による報酬単価の考え方について  生活介護を利用する障害者の障害特性によりその支援内容や活動は様々である。障害支援区分の考え方ではなく、支援内容によって報酬や加算を検討していくことが必要。 12. 就労定着支援事業利用を指定特定相談支援事業者による計画相談支援を必須とすることについて  就労定着支援のためには本人および就職先との信頼関係が重要な要素であり、就労定着支援事業所では,本人の定着支援サービスの利用意思を確認し,利用開始前に本人や就職先企業の状況を把握し、サービスを開始するにあたっては、定着支援機関から切れ目なく一貫して支援することが求められるが、実際はセルフプランが多く、利用事業所や支援者が代わる際のスムーズな引継ぎが難しい状況になっている。  地域においてより質の高いサービスを提供していくためには、就労系福祉サービスを利用するにあたり計画相談支援とモニタリングを行った相談支援事業者が就労定着支援事業の利用に際してもサービス等利用計画を作成して一貫したケアマネジメントを行うことを必須とする必要。   13. 就労定着支援サービスの利用対象範囲の拡大について  多層的な支援体制が求められることから利用期間経過後の支援につながるよう就労定着実績体制加算の継続就労者の占める割合を段階的に区分する等の見直しを行うとともに、利用対象範囲を就労系福祉サービス利用の就職者以外にも拡大することが必要。  考えられる課題;  ‐就業・生活支援センターや地域障害者職業センターでの人員の限界がみえる。  ‐就労系福祉サービスは必要としないが労働関係機関の支援だけでは就職につながらない障害者への十分な支援ができていない。  ‐ハローワークを独力で利用して就労した障害者は就労定着支援サービスを利用できないことから相談先が限られ就労継続の支援が受けにくく離職につながるケースが多数見受けられる。  ‐特別支援学校の卒業生のアフターフォローについては、就労定着支援事業の利用ができず、また、就業・生活支援センターでカバーできる限界を超えている実情がある。  ‐公務部門への就職者への就労定着支援において充分な体制が整えられていない。 14. 就労系福祉サービス従事者の人材確保と資質向上について  経験の浅い従事者採用がみられること等から就労系福祉サービス従事者の人材確保と資質向上むけ、研修プログラムの提供や研修を段階的に評価する報酬体系、それに連動した従事者の給料増の仕組が必要。 15. 重度障害者対応型のグループホーム設置促進について  グループホームを望む重度障害者に対し個々のニーズに対応できるよう、日中サービス支援型グループホームの報酬単価の引き上げと個人単位での居宅介護利用の特例を継続し、重度障害者対応型のグループホームの設置が必要。 16. 地域生活支援事業移動支援サービスの報酬及び要件改定について  移動支援サービスは認定調査で身体介護の有無が決定し報酬が決まるが、地域格差があり同等の支援が得られるためには報酬単価の一元化が必要。 17. 地域生活支援事業における障害当事者団体活動の育成・支援体制の整備について  障害当事者団体は、障害者の外出機会の確保や集まる場所の提供などを通じて障害者の健康づくりや健康の維持増進などに寄与している。こうした活動が、障害福祉サービス等の利用を抑え障害福祉サービス等を持続可能な制度とするための効果が期待できると考える。ことからも障害当事者団体活動を育成・支援する体制の整備が必要である。都道府県地域生活支援事業および市町村地域生活支援事業のなかに障害当事者団体活動の育成・支援のための制度の創設が必要。 18. 65歳問題の見直しについて  使い慣れた事業所でサービスを受けられるためにも共生型サービスを担う事業所数を増やすことが必要であることから指定要件の緩和や報酬単価の見直し、さらに人材育成の強化が必要。 19. 新型コロナウイルス感染症による影響について (1) 感染拡大予防策による利用調整や利用者への自粛等により事業所経営に大きな影響が生じており、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う収入減に対する対応策が急務。 (2) 外出の制限や各種社会福祉事業の中止等により孤立や心身のバランスの乱れ等が生じないよう相談体制の充実が求められることから身体障害者相談員等の活用が重要。また、対面式の相談等が難しい場合も想定されることからオンライン環境整備の設置等を含めた支援に係る費用助成や報酬・加算の検討も必要。 (3) 入所施設やグループホーム等の集団生活において、安心して支援を受け、提供できることが肝要であることからも、公費負担による定期的なPCR検査や抗体検査のための早急な体制整備が必要。